では、彼女が数ある会社のなかから、王将でパートしようと思った理由は何だろうか。
「私は18歳で結婚して、19歳で子どもが生まれました。そのまま子育てをしていて、27歳になった頃、本格的に働きたいと思ったんです。そんなとき、近所に餃子の王将ができると聞いて、働かせてくださいと申し出たんです。最初は洗い場を志望したのですが、もう決まっているから、ホールで接客をしてくれ、と。接客なんて、できるのかなと心配でしたが、やっているうちに楽しくなって、そのまま24年経ちました」
大谷さんが王将に入ったのは、店が自宅の近所にあること、じっとしているのが嫌で、体を動かす仕事がしたかったこと、そして、ふたりの子どもに習い事をさせるためのお金が欲しかったからである。そこで、餃子の王将の堺浜寺店の面接を受けたところ、オープン直前で人手が足りなかったこともあり、すぐに入店することができた。ちなみに、当初、堺浜寺店はフランチャイズだった。少し経ってから、本部が買い受け、直営店に変わった。
「パートにとっては仕事よりも、家庭、子どもが大事です。ですから、お店に入った頃は午後2時には帰っていました。ただ、人手が足りないと言われると、私も頑張るほうなので、ついつい長く働くようになって……。それでだんだん勤務時間が長くなっていきました。
王将のランチタイムは常連さんが多いんです。5年ほど前から来ている、おじいちゃんの常連さんがいます。自転車に乗ってきて、お持ち帰りの餃子と焼き飯を注文されるんですが、必ず、『大谷さん、頑張ってや。わしはあんたに会いに来てるんや』と言ってくださいます。それがとっても嬉しい。人に感謝されながら働くことができるのは幸せです。人からの感謝は心の栄養になります。接客はありがたい仕事だと思う」
大谷さんは店が開店した頃から在籍しているので、今では店のリーダー役である。正社員、パートを問わず、若い従業員の相談に乗るし、店長とも店の運営について協議する。単なるパートでなく、重い責任を持った仕事をしている。