多くの優良企業で、会社全体に強く浸透している独自の文化。戦略と同等か、場合によってはそれ以上に大切な要素を、組織に根づかせ、業績につながるようにする手法とは。

文化なき企業は、並の業績しかあげられない!

組織を1つにまとめ、社員が正しい方向にいく動機を与えるものは何だろう。多くの優良企業は、それは「企業文化」であると答える。ここでいう「文化」とは、成功につながる環境をつくる、価値観や考え方や行動方式のことだ。

市場で勝ち抜くための企業文化の重要性は、ベイン・アンド・カンパニーによる「経営管理の手法と傾向に関する世界調査」の最新版で浮き彫りにされた。調査対象となったグローバル企業の上級幹部1200人のうち91%が「企業文化は戦略と同じくらい重要である」という意見に賛成だと答えたのである。

ベイン社による別の調査によると、企業幹部の81%が、「文化なき企業は並の業績しかあげられない」という意見に同意した。しかし、勝ち抜くための企業文化とは、具体的にどんなことをいうのだろうか。

まず1つは、既存の価値観や伝統に基づく企業独自の性質や精神である。例えば、トヨタの品質やコスト効率に対する姿勢と、同じようにそれらを重視するエンタープライズ・レンタカー。しかし具体的にはまったく異なる種類の姿勢である。だが、どちらの会社でもすべての社員が自社の価値観や優先課題を見分けられるような、強い環境づくりがすでにできているはずだ。

また、そういった体質や精神を、顧客目線のアクションや収益におとしていく規範や動きも大切な文化である。そうした企業の社員は、社内政治より、顧客や競合他社を視野に入れるという健全な姿勢を保つ。会社全体の業績に対して当事者意識を持つ社員が育つのだ。

また、官僚的な議論より、実際に動くことを重視する社員が増える。例えば9.11の直後、エンタープライズ・レンタカーの社員たちは、当時の社内ルールに反する行動を取った。ニューヨークから自宅に戻る、あるいは単にそこから離れるために片道だけレンタカーを借りたいという顧客に対し、先を争うように応じようとしたのである。

企業に正しい文化を浸透させることは容易ではない。社員の考え方や行動習慣を根本から変える必要があるからだ。では、強い文化を築き、維持している企業は、どんな方法でそれを可能にしているのか。