このように、相手に、答えを出さなければいけない理由をはっきり伝えるのが『訴求を理由で包む』パターン。なぜ理由で包むといいかというと、人は理由があれば納得するからです。納得があれば相手は決断しやすく、自分も訴求を伝えやすくなるはずです」

法人営業に必要な「今日の訴求」

即決されづらいBtoB営業、対法人営業にも、攻略法はある。

「BtoBに効くのは、小さな約束を1個1個取り付けていく『階段営業』。

営業の要求を通すことが商談のゴール。「考えます」は求める答えではありません。選択するのはお客様ですが、必ず「買うか買わないか」の答えを迫ってください。

お客様に会いに行くということは、営業として何らかの要求が必ずあるはずです。見積書を見てもらう、自社のショールームに来てもらう……そういった段階を踏みながら、最終的に契約まで漕ぎ着ける方法です。

肝に銘ずるべきは、『今日の訴求を決めていく』ということ。なんとなく営業に行くと、お茶を飲むだけで終わってしまいます。今日は見積書を受け取ってもらう、今日はショールームへの来場日程を決めるなど訴求を決めて、それに対する即決を促すのです」

堀口氏は営業を「友好営業」と「敵対営業」に分けて考える。友好営業は、100円ショップや飲食店のように低単価商品を扱う営業のこと。猛烈な営業活動を行わなくても、相手に嫌われないようにしていれば商品は売れていく。一方、敵対営業は不動産や保険のような高額商材を扱う営業のこと。営業を行っても「考えます」と言われる可能性が高い。

「お客様が要求に対して抵抗するから『敵対』と呼んでいます。こうした高額商材を売りたい場合、『説得』が必要です。

営業における説得とは、プレゼンテーションして、すぐにクロージングに持っていくということ。よく、本当にいい商品なら高くても買ってもらえる、売り込まなくても売れていく、という意見を聞きます。確かに、売り込まない営業も手法としてはあります。

しかし、はっきり言って世の中の9割以上の商品は、売り込まないと売れません。勝手にどんどん売れていくのはiPhoneのようなハイレベルな商品だけです。だから、必死になって訴求することが、1番売れる方法なんです」

もうひとつ堀口氏が指摘するのが、「『売る気』を隠した営業では売れない」ということだ。

「『売る気』を隠していいタイミングはアプローチだけ。クロージングでは、はっきりと『売る気』を出して訴求しないと売れません。

男女の話にたとえると、男性に下心があったとしても、女性には『下心なんてないよ』と言わないと近づいていけませんよね。だから、アプローチのときは『売る気』を隠す。でも、その後、クロージングになったら、『付き合ってください』と言わなきゃ結果は得られない。それと同じです。営業トークに奥ゆかしさなんていりません」

とはいえ、なかなか押しが強くなれない人も多いだろう。

「訴求する勇気が出ない人は、練習あるのみ。最初はうまくできなくても、必ずうまくなります」