大学を早期に決定するという「リスク」
一方で付属校の「自由」を持て余してしまうと、学力不振に陥り、大学の内部進学さえできないという事例も起きている。そうなると、高校生の途中になって慌てて他大学に向けての対策を始めなければならない。
しかし悲しいかな、付属校の大半はエスカレーター式に系列大学に進むことを前提とした比較的ゆるやかな学習カリキュラムを敷いているため、一般的な大学受験生の学力レベルに追いつくのは並大抵のことではない。しかも、中学入学以降日々勉学に励む習慣など「捨て去って」いる生徒も少なくないから、勉強のペースを元に戻すのは困難であるといってよい。
大学付属校には「進路(分野)が限定される」というリスクも存在する。ある男の子が立教池袋中学校に進学したとしよう。当初の第一志望校であり、大満足の中学入試結果であった。しかし、高校生になって「将来は医師を目指したい」と言い始めたらどうだろう。系列の立教大学に「医学部」はない。そうなると、その時点から医学部進学を目指しての予備校通いが必須となる。
そして、その予備校で席を並べている中高一貫の進学校に通う子どもたちの大半が、「先取り学習」をおこなっているため、受験勉強スタート時点で既に大きな学力差が生じてしまう可能性が高いのだ。こうなると、本人も保護者も第一志望校のはずであった付属校の進学を悔やむことになってしまう。
志望校選定には「前向きな理由」が大切
先述した通り、大学入試が混乱をきたしていることもあり「付属校人気」が過熱している。しかしながら、保護者としては、子の志望校を選択する際には消去法ではなく、もっと前向きな理由付けがほしいものである。
わたしは予備校講師の武川晋也氏との共著『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書/朝日新聞出版)をこのたび上梓した。
わが子は果たして「付属校向き」なのか、「進学校向き」なのか? そして、わが子はそもそも「中学受験」の道を進むべきか、「高校受験」を選択すべきか? そのような悩みを抱えている保護者に対して塾講師の本音を開陳した内容に仕上げている。手に取ってくださると幸いである。