“MARCH付属“を蹴った小6女子の勝ち組人生

数年前に青山学院中学と成蹊中学(系列の大学にエスカレーター式に進学できるが、他大に進学する生徒が大半)の2校に合格をした女の子がいた。

合格直後、2つの合格通知を手にした母娘は、どちらの学校に進学すべきか悩み、塾に相談をしにきた。こちらが推したのは成蹊。偏差値上では当時もいまも青山学院が成蹊を大きく上回っているが、彼女の学力的な「余力」を十分に感じていた(中高でさらに大きく学力を伸ばせそうに感じた)こと。そして、彼女自身が周囲に流されやすいタイプで、青山学院に進むと外部受験の芽はなくなるということは明確だと思われたからだ。塾サイドの提案を受け入れた母娘は成蹊進学を決断した。

その6年後、彼女が塾に顔を出した。聞けば、大学入試で慶應義塾大学に現役合格したという。もし、青山学院の付属校に進んでいれば、大学も青学だったはずだ。彼女は付属校を回避したことで学力的にワンランク上の慶應に進学することができたのだ。彼女はわたしに、「あの中学入試のときに成蹊を選んで本当に良かった」と語った。このような事例は決して特別ではない。

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よって、「大学までエスカレーターだから安心」と付属校に進学すると、かえって損してしまうケースがあることを保護者はしっかり理解しておきたい。小学6年生の時点で進学する大学を決めることになる付属校進学は一定のリスクがつきまとうものなのだ。

中高大エスカレーターの「トク」「ラク」

とはいえ、受験生やその保護者の多くは、付属校だからこそ「トク」ができる点、「ラク」ができる点に大きなメリットを感じているわけだ。

付属校に入れば、高校入試に阻まれることなく、大学入試を見据えて戦略的に組まれたカリキュラムの中で中高6年間を過ごすことができる。それだけではない。早期のうちに「やりたい」ことが定まっている子にとって中高一貫校は継続的に何かに一意専心しやすい環境である。

幼少期より絵画に取り組み、その実力を発揮している小学生の女の子がいるとしよう。当人も保護者も将来は美術の道へと歩ませたいと考えている。このような具体的な将来像を思い描くことのできる子には中学入試の道をわたしは声を大にして勧めたい。

この女の子であれば、美術に力を入れている中高一貫校、例えば女子美術大学付属(杉並区和田)などがいいかもしれない。美術教育を中心としたカリキュラムを編成しており、大半の卒業生たちが系列の女子美術大学をはじめ、美術と関連する分野へ進んでいる。

将来像を早期のうちから描ける子は、高校入試のみならず大学入試もない大学付属校に進むことで、中学・高校・大学の10年間の一貫教育を受けることができ、心にゆとりをもって学ぶことができるのではないだろうか。