任期は撤廃、終身皇帝化した習近平の野望

前回、中国が大国化した理由と戦略について考察した。巨大な人口と広大な国土、奥深い中華文明の歴史は、大国化のファンダメンタル(重要条件)。それを束ねる共産党一党独裁は、人権抑圧などの問題を抱えながらも、政府の号令一下によるスピード変革を可能にして経済成長を促した。さらには中央集権的な政治体制の一方で、地方の首長や党書記に経済・経営面での権限を与えて自由に開発させる地方自治を徹底したことで、世界からヒト、モノ、カネを呼び込む開発競争が中国全土で巻き起こり、大国化の巨大な推進力になった。

香港デモは今も続く。(AFP/時事=写真)

このように大国化した中国は、これからどこへ向かうのだろうか。この点は、最高権力者である習近平国家主席の国家観、国家構想が中国の行方に大きく関わってくる。

習近平は2012年11月に胡錦濤や温家宝などのいわゆる第4世代の指導者が引退した後を受けて、中国共産党のトップである中央委員会総書記の座に就いた。翌13年3月の第12期全国人民代表大会(全人代。国会に相当)第1回会議において国家主席、国家中央軍事委員会主席に選出され、党、国家、軍の三権を完全掌握する。任命した李克強首相とともに第5世代のリーダー習近平による指導体制が幕を切った。