大手企業も採用する「デザイン思考」
意外に思えるかもしれませんが、クリエイティブな仕事に携わる社員の養成のため、大手企業からも注目を集めている“デザイン思考”が、人生の困難の解決にも役立つことが各国でも知られてきました。しかも、実はデザイン思考発祥の地ともいえるスタンフォード大学d.schoolには、学生からの人気も厚く、卒業後も人々が訪れるという「人生デザイン講座」があるのです。
d.schoolで始まった「デザイン・ユア・ライフ・プログラム」は、すでにハーバード、MIT、イェール大学などの一流大学でも採用され、世界100大学以上に広がっています。2020年には日本でも企業向けに公認のワークショップが展開予定です。
そして、プログラムの創設者であるビル・バーネットとデイヴ・エヴァンスによる取り組みの長年の成果は、2019年10月に刊行された『スタンフォード式 人生デザイン講座』という1冊の本にまとめられ、日本でも好評を博しています。
すでに「米国の超エリートが書く“人生日誌”の中身」として「何をしたいのかわからない」に対処するため方法をご紹介していますが、そこからさらに進んで、次は「どうやったら解決できるのかわからない」状態に取り組むための方法をご紹介します。
必要なのは、人生の「プロトタイプ」
モノの試作品(プロトタイプ)であればイメージは容易だと思いますが、人生の試作品なんて不可能ではないか、と思う人もいるでしょう。しかし、デザイナーにとってはまさに「つくることは考えること」。プロトタイプなしにデザインを先に進めるなんて考えられません。考えながら行動し、プロトタイプを作り続けることが、次々と問題を見つけ出すことのできる大きな理由でもあるのです。
人生の試作品を作る目的は、普通とはちょっと違います。何かターゲットになる課題があったとき、その課題をうまく解決できるかどうかを確かめるために、プロトタイプを作るのではありません。プロトタイプを作ることで、より本質的な問題や自分を縛っていた思い込みに気づくこと、そして、立ち止まることなく次々と何かを試してみるための、勢いが生まれるのです。
実は、著者が「働きすぎな日本の『社畜』に伝えたいこと」で触れている“ライフデザイン・インタビュー”も、重要なプロトタイプづくりのプロセスの1つ。自分が迷っている選択肢を実際に選んだ人に話を聞き、能動的にイメージを膨らませることで、より具体的な未来像を描き、さらなる行動へとつなげるためのステップになるはずです。