月10冊以上の課題本をどう選ぶか
毎回の課題本は、基本的にはすべて山本さんが決めている。主にビジネス書が対象の「アウトプット勉強会」、文学作品を読む「文学サロン月曜会」、哲学書に向き合う「フィロソフィア」のほか、不定期に行われるイベントもあり、月に10冊以上を選んでいるという。書評を参考にしたり、書店の棚を見て歩いたりしながら気になったものはとりあえず購入。その数は月に50冊以上にもなる。
課題本決定の際に大事にしていることのひとつは、できる限り古典や名著から選ぶということ。時代を超えて読み継がれる作品にはそれだけの理由と価値があると感じているからだ。文学サロン月曜会の第1回は夏目漱石の『こころ』だった。
「僕自身が漱石が好きということもありますが、めちゃくちゃ王道をやろうと思ったんです」
思想の主流がサブカルチャーに移行したいま、あえて日本文学全集、世界文学全集のようなある種の教養的なものをやっていくことに意味があると山本さんは考えている。
そして、もうひとつの大事なポイントが「脳が汗をかく」ということだ。
「読み終えた」体験がその後の人生でフックになる
猫町読書会を始めた理由が、自分1人ではなかなか読み通せない本を仲間と一緒に読もうということにあった。世の中には、多少しんどい思いをしても読む価値のある本がたくさん存在している。だが、好きな作家の本や実用性の高い本なら1人でもどんどん読めるが、「脳に汗をかく」ような本は自分だけで読み切るにはハードルが高い。
「読書会の課題をきっかけに、そういった本に触れてみてほしい」というのが山本さんの願いだ。
カントの『純粋理性批判』を課題本にしたこともある。
「おそらくみんな、僕も含めて、ちんぷんかんぷんだったと思います」
だけど、と山本さんは続ける。
「一度でも最後まで読み切ったということが、その後の人生を変える可能性がある」
意味がよくわからないままに、ただ単に文字を追っただけであったとしても、読み終えたという記憶と何かしらの誇りのような気持ちは残る。それが、その後の人生で、ひとつのフックになる。いつかどこかのタイミングで、何か大きなものがそこにひっかかってくるかもしれない。