それでも何度も同じミスを繰り返す部下もいると思います。そんなときは、やはり叱らざるをえません。でも私は何度も繰り返すミスには何かが隠されていると思っています。それはおそらく本人が仕事をするうえで大事にしている部分。本人の譲れないポイントやこだわりのせいで失敗を繰り返していることは少なくありません。それなのに「これ、いつもできていないね」と言ってしまうと、その大事にしていることを教えてくれなくなります。だから私は、「そこをちょっと一緒に探ろうか」と言って、一緒にそのポイントを見つけるようにしています。たとえば本人は妙に丁寧さにこだわっていて、スピードは二の次という考え方を持っていたりするものです。

本人が大事にしていることは傷つけずに、正しい方向に導いていく

「すごく丁寧にやってくれるのは○○さんの良さだよね。でもお客さまから見たら、それがわからないから、単に仕事の遅い人に見えてしまうよ。それはもったいないよね」

というように、本人が大事にしていることは傷つけずに、正しい方向に導いていきます。すると相手も「私が大事にしているものを否定せず、一緒に解決策を探ってくれているんだな」ということは伝わります。人間には感謝の返報性があるので、「そこまで私のことを知ろうとしてくれた人には応えたい」と思うのです。

そして、できれば本人の得意分野ややりたいことを生かして、組織やプロジェクトの中で「役割」を与えてあげましょう。今の若者は自分がその場所にいることの意味、存在意義がほしいからです。先日、若い営業職の男性に、「上司に言われて嬉しかった一言はある?」と聞いたところ、「“君が入社してくれてよかった。助かってるよ”と言われたことが忘れられない」と教えてくれました。「自分はこのチームに貢献できている」と思える職場は、離職率も低いものです。

上司世代はここを勘違いしていて、「今の若い人は会社への忠誠心がない」と嘆いているけれど、意外や意外、自分がこの職場になくてはならない存在だと思えれば、彼らはとても貢献してくれます。ですから折に触れて「君が必要だ」「助かっている」と伝えてあげてください。

(構成=長山清子)
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