新しいビジネスモデル構築の重要性
今後の展開を考えると、当面、統合会社は既存の経営資源を生かし、新しいビジネスモデルを立案・構築していくことが求められる。
LINEがタイで人気を得ていることは参考になるかもしれない。東南アジアのSNS市場などを見渡すと、特定企業のアプリが大きなシェアを獲得している状況にはないとみられる。その分、わが国のIT企業にもチャンスがあるだろう。
ソフトバンクグループ傘下のZHDは、国内事業に強みを持っている。LINEはコンテンツ開発などが得意だ。互いの強みを生かし、新しいサービスをスピーディーに提供すると同時に、国内外での提携・アライアンスを増やすことは可能だろう。
その際、IT関連の企業に加え、アニメやゲームをはじめとするわが国のコンテンツ業界などとの協働も目指せばよい。わが国のアニメなどは国際的に評価が高い。そうした要素を取り込みつつ、国内と東南アジアを中心にメッセンジャーアプリやモバイル決済などのサービスを提供できれば、成長期待は一段と高まる可能性がある。そうした発想は、両社が国内での過当競争を避けつつ規格の統一などを進めることにもつながるはずだ。
東南アジア市場の開拓に商機
足許、世界経済は急速かつ大きく変化している。米中の貿易摩擦の影響などにより、中国から他のアジア新興国に企業は生産拠点などを移している。それに伴い、アジア経済のダイナミズムは、中国から東南アジアにシフトしつつあるように見える。
ベトナムには韓国などの企業が積極的に進出し、相対的に景気が堅調だ。タイ、インドネシア、マレーシアなども負けじと優遇策を導入し、外資誘致に注力している。こうした変化は、ZHDとLINEの新しいビジネスモデル構築に追い風となる可能性がある。
両社は、国内での基盤を固めつつ経営資源を東南アジア市場などの開拓に再配分することで、新しいビジネスモデルの確立を目指すことができるだろう。そのために、経営トップが統合後の組織を一つにまとめ、組織全体が進むべき方向を明確に定めることが重要だ。