投資先を決めるときには、長期的に成長するか、利益を上げていける会社かということを見極めていくわけですが、そこで要になるのは、「人」です。働く人を率いる経営者の考えは何より重要ですし、機械を動かすのも技術を磨くのも、すべては人です。実際に、経営者や社員がいきいき働いている企業に投資したほうが、そうでない企業に投資するよりも成果が上がります。これは、過去に延べ7000人以上の経営者にインタビューをおこなってきた経験上、明らかにいえることです。
「成長のにおい」を嗅ぎ分けろ
投資家というと、どんなイメージがありますか。
「パソコンの前で、数字のデータとグラフを分析している」「ギャンブルのように株式やFXを売買する」――。そのような「デイトレーダー」の印象が強いかもしれませんし、マンションなどの不動産投資をする人を想像するかもしれません。
しかし、実際は先ほど語ったように、人間的で泥臭いものなのです。
特に、私のように主な投資先が中小企業の場合、地方まで足を運び、実際にその土地を歩き回り、人に会い、直接お話をして、成長するかどうかを見極めています。よく例に出すのは、富山県にある東証二部上場の朝日印刷という会社です。全国的にはあまり知られていないかもしれませんが、医薬品や化粧品の箱の印刷をしている会社で、この分野ではトップとなる約4割のシェアを誇っています。
なぜ大手を差し置いてシェアを獲得できているのでしょう。医薬品には、いわゆる薬事法という法律があり、パッケージの印刷をするのにも面倒な手続きが多くなります。そのため、大手印刷会社はわざわざ力を入れない分野なのです。そこに朝日印刷は勝機を見出し、リスクをとって設備投資をしています。現在も2020年春に大規模な工場が完成予定です。
投資家的な見方をすると、成長のにおいを嗅ぎ分けられるようになるのです。「印刷=斜陽産業」という先入観にとらわれると、こうした成長に目がいきません。常識や固定観念から逃れるためにも、投資家的なものの見方は必要なのです。