論客をひとまずリベラルと保守に分ける

田中辰雄・浜屋敏『ネットは社会を分断しない』(角川新書)

より正確に言えば、ここでの値はその人自身の政治傾向ではなく、その人をフォローしている人の政治傾向である(その人自身の政治傾向は当人にアンケートに答えてもらわなければ知りようがない)。さらにフォローする人の政治傾向であるがゆえのバイアスも生じうる。たとえば実際に政治権力を持っている人の場合、その人を批判するために反対意見の人がフォローするということが起こるので、値の絶対値が小さくなり、結果としては穏健な値になる。図表1で安倍晋三氏や橋下徹氏の政治傾向の値が小さいのはこのためで、リベラルの人が批判のためにフォローしていると考えられる。

またテレビ等で知名度が高いと幅広い範囲の人がフォローするため、やはり絶対値が小さくなり穏健な値になるだろう。小泉進次郎氏や田原総一朗氏の値が小さいのはこのためと考えられる。このように、この図表での政治傾向はその人自身の政治傾向そのものではなく、ずれが生じうる。

しかし、それにもかかわらず、図表1の結果には一定の説得力がある。この図表にそって上下の半分に分類し、プラスの値の論客を保守陣営に、マイナスの値の論客をリベラル陣営に分類すると違和感はないだろう。人が自分に近い考えの人の意見を聞こうとする選択的接触は確かに働いている。ただ、いま述べた例からわかるように値それ自体にはあまり信頼性は無いので、以下では個々の値は無視し、プラスの値が出た論客はすべて保守論客、マイナスの値はすべてリベラル論客と見なして一括して分析を進めることにしよう。