社員自らが欲しい給与金額を提示する

そして、個人の給与を決定する基準は、「市場価格」を活用することにしました。給与が決まる流れはこうです。

まず社員は、どれくらい給与が欲しいのか、金額を提示します。それに対して、会社はまず「もしその社員が他社に転職するとしたら、どれくらいの給与を打診されるだろう」という視点で市場価値、つまり「社外価値」を割り出します。そこにくわえて、その人のチームでの貢献度、つまり「社内価値」を考慮して検討するのです。

また、社員によっては複業との兼ね合いで、サイボウズにフルコミットしない人もいます。その場合は、自分の何%をサイボウズに費やすのか計算して、配分します。

すると、「自分の市場価値は月給にして50万円だけれど、サイボウズには50%しかコミットできないから、25万円でお願いします」といった具合に給与が決まります。どれくらい給与をもらいたいかさえもバラバラ、100人100通りなのです。

楽しくなくても「嫌じゃない」場所にする

こんな時代の中で、マネジャーの役割はこれからどう変わっていくのでしょうか。

わたしはサイボウズの入社式で、ここ数年、こんなことを言います。

山田理『最軽量のマネジメント』(ライツ社)

「みんな、サイボウズに入ってくれてありがとう。わたしの役割は、君たちを早く辞めてもらえるようにすることです」と。

なんてひどいことを! と思われるかもしれません。せっかく離職率を4%まで下げることができたというのに。

しかし、本当に素直な気持ちなのです。「早く辞められる」とはつまり、ほかのどの会社でも活躍できる素晴らしい人になってくれる、ということ。それだけの力をつけた、ということです。

そして、そんな人が「それでもいいからサイボウズで働きたい」と思ってくれるような会社にするのが、経営陣の役割ですし勝負どころだと考えています。

何も、モチベーションを上げる必要も、テンションを上げる必要も、「仕事を楽しく」させる必要もありません。すくなくとも、メンバーがすこしでも「会社に行くのがイヤではない」と思えるように、ひとつずつ原因を潰していくことです。

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