「資本主義のアップデート」には抗えない

アメリカに来て、本当によくわかったことがあります。

会社という組織は今、大きな岐路に立たされています。「資本主義のアップデート」という抗えない流れに。

世界時価総額企業ランキングを見ると、トップの10社中、8社はアメリカ企業です。50社まで見てみると、アメリカ一強の牙城に中国が切り込む一方、日本企業は唯一トヨタ自動車が40位台に留まるだけ。

このランキングが意味しているのは、ますます拡大する貧富の差です。「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」を筆頭に、一部のIT企業や金融機関などの社員や投資家が富を得る一方、その恩恵を受けられず、日々の暮らしに困窮する人々が増えています。

製造業や農業が産業の中心となってきたアメリカ中西部や南部はもちろんのこと、比較的豊かな東海岸、西海岸でさえ、地区によってはホームレスや車上生活者が貧しい暮らしを余儀なくされているのを、わたしはこの目で見てきました。

GAFAで働きながらNPOを立ち上げる若者たち

アメリカの若者たちはその状況を目の当たりにして、立ち上がりはじめています。このまま放置していいはずがない、と「GAFA」で働きながらもNPO法人を立ち上げたり、ボランティアに熱心に取り組んだり、社会貢献に人生のリソースを費やしている。

彼らは、新しい資本主義のあり方を模索しているのです。これまでの資本主義は、端的に言えば「株主の利益追求が優先され、会社が株主によって支配される社会」でした。社員には、四半期ごとの短期的な目標をクリアすることが求められ、長期的観点からの投資は株主を説得しなければ難しかった。

それに対抗するように、今起ころうとしているのは「会社の民主化」です。

会社を市民の手に取り戻し、まさに「社会の公器」とする。

株主だけでなく、そこで働く社員、顧客、取引先などあらゆるステークホルダーが、一人ひとり意思ある「人間」として、健全に暮らせるビジネスモデルを実現すること。「消費する側」として、会社が生み出した享楽に金銭を費やすのではなく、「自ら参画する側」として、より社会的意義の高いものに投資し、自分も影響力を発揮する。

そうやって、働くこと、楽しむこと、生きることがゆるやかに接続している状態が、新しい時代を生きる若者の目指す世界です。