「上田氏は憲法議論に前向きであることを表明済み」

自民党は4月の衆院大阪12区、沖縄3区補選で敗北。先に紹介した埼玉県知事選に加え岩手県知事選でも支援する候補が敗れている。7月の参院選では貫禄をみせたものの、散発的に行われている補選や大型地方選では負けが目立つ。それだけに、参院埼玉補選は、本来なら有力候補を立てて勝利を目指したいところだった。

ところが、である。自民党側を取材していても焦燥感はほとんど感じられない。その理由を、下村博文党選対委員長がこう語っている。

「上田氏は出馬会見で完全無所属、憲法議論に前向きであることを表明している」

つまり上田氏は野党勢力、非改憲勢力ではなく、自民党と協力関係をつくる改憲勢力と受け止めているのだ。

もちろん下村氏の発言は、不戦敗になることへの「負け惜しみ」の側面はある。上田氏が主として野党勢力に担がれて選挙戦を戦うのは間違いないのだ。

上田氏当選の場合は「二階派入りする」という噂

ただし、下村氏の発言が虚言と言い切れない側面もある。上田氏は、1993年の衆院選で小沢一郎氏らが率いる新生党で衆院議員初当選。新進党、民主党などを経て知事に転じた。こう表現すると根っからの野党政治家のようにみえるが、そうではない。新生党に加わる前は新自由クラブ、自民党に所属。ルーツは保守政治家なのだ。

9月20日の出馬会見では、憲法について「9条は自衛隊の存在が重きをなす条文になっているべきだ」と発言。自民党が目指す「9条に自衛隊明記」に理解を示しているとも受け止められる発言だ。さらに上田氏は「国会時代の仲間らから『政治の場で県政をバックアップしながら国政の課題に取り組め』という声を受け止めた」と発言している。

「国会時代の仲間」としてすぐに浮かぶのが自民党の二階俊博幹事長。二階氏と上田氏は新生党、新進党で同じ釜の飯を食った仲。二階氏は上田氏に対しては「立派にやってこられた。今後も活躍されるだろう」と、エールを送る。

補選が告示された10日には、自民党の平沢勝栄衆院議員が上田氏の応援に駆けつけ「二階氏から応援してこいと言われている」と語った。永田町では、上田氏が当選した場合、二階派入りする、という噂が絶えない。