医療費以外に減らせる項目も多い

このように、特に世帯主が70代以上の2人以上高齢者世帯の支出の特徴としては、「保健医療」支出が平均対比で月2000円近く増えるが、一方で「教育」支出が1万1000円以上、「交通・通信」支出が1万6000円以上、仕送り金の減少などにより「その他の消費支出」が7000円以上、「食料」「被服及び履物」「教養娯楽」がそれぞれ4000円以上減ることから、トータルで月23万7000円と、平均世帯の月28万7000円から5万円以上も支出が減ることがわかる。

このような支出の特徴や変化を知っておくことは、自らの支出を見直す際の参考となるはずだ。

70歳まで働ければ貯蓄は550万円で済む

世帯主が60代前半まで働いて、60代後半から無職になり、それまでの貯蓄を切り崩して30年間生活すると仮定すれば、今後の年金支給額が不変と仮定しても1029万円の貯蓄が必要になると試算した。

だが、仮に60代後半の5年間就業を続けられると仮定すれば、月平均8万円×12カ月×5年=480万円の貯蓄ができる計算となり、65歳時点で1029-480=549万円の貯蓄で済むことになる。

このため、個人としては現役世代からできるだけ長く就労できるように、健康寿命の延伸や職業スキルを形成しておくこと、社会としては65歳から70歳までの5年間さらに雇用を延ばす環境を整備することが、極めて重要と言えるだろう。

一方、老後に家計の支出金額や支出構造が変化することもしっかりと考えて、ライフプランを立てていく必要があるだろう。もちろん、収入に併せて支出も見直すことも必要だが、まずは、こうしたライフサイクルとともに家計の収入・支出の構造変化が生じることを理解することが、老後の備えの第一歩である。

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