60代後半以降の世帯で社会保障給付が安定

しかし、2人以上の高齢無職世帯の実支出は、世帯主の年齢で変化していることには注意が必要だろう。毎月の不足分は世帯主の年齢階層別によって変わってくる可能性がある。そこで以下では、総務省の家計調査年報(2018年)を基に、60歳から5歳刻みで家計の収支を見てみる。

二人以上の高齢無職世帯の月間家計収支 (2018年)

まず、収入面を見てみると、「実収入」と年金等の「社会保障給付」に分けてみることができる。そして、実収入に占める社会保障給付の割合を見ると、世帯主が60歳以上の「高齢無職世帯」の収入の柱は「社会保障給付」であることがわかる。

現在の年金制度は、64歳以前の年金は満額の受給とはならない。このため、世帯主が65歳以上世帯の社会保障給付は平均19万円台と安定して推移しているが、世帯主が60~64歳世帯の社会保障給付は11万円台と少なくなっている。このため、2人以上の高齢無職世帯の実収入は、世帯主が60代前半では年金を中心に少なめだが、世帯主が60代後半以降は20万円を上回る安定した収入が続いている。

30年生活を前提とすれば1029万円の貯蓄が必要

続いて、支出面からみてみると、税金等の「非消費支出」を除いた「消費支出」は、世帯主が60代前半で最も高く、月平均で27万円を超えている。しかし、それ以降は徐々に消費支出が減り、世帯主が85歳以上では20万円を若干上回るところまで下がる。

また、毎月の不足額を見ると、世帯主が60代前半では11万円を上回るが、世帯主が60代後半から70代前半では6万円前後に縮小し、世帯主が85歳以降に至っては、6000円以上の黒字になっていることがわかる(図表1参照)。

つまり、仮に世帯主が60代前半まで働き、60代後半からは無職になり、それまでの貯蓄を切り崩して30年間生活すると仮定すれば、今後の年金支給額が不変として概算すると、{(5万8000円+6万円+4万2000円+2万3000円)×5年-6000円×10年}×12カ月=1029万円の貯蓄が必要と試算される。