むしろ、様式を崩すことで生じるデメリットを懸念する人もいると思います。極端なたとえになりますが、ビジネスメールで「△△ちゃん 昨日のランチMTGは楽しかったね」と崩しを加えると、相手に「なんだか無礼」「私に下心があるのでは」と思われる可能性もあるわけです。クライアントに悪印象を抱かれることを懸念して、一線を引く意味で「ビジネスメールは絶対に崩さない」と、意識して心がけている人もいるでしょう。

個別対応をするのはやや面倒くさい

様式を崩すのがそもそも面倒くさい、と考える人もいます。たとえば、「Aさんには名字+さん付け、Bさんには下の名前+さん付け、Cさんには名字+様でよかったよね?」と、メールを書く前にいちいち考え、各自に対して違った書き方をするとなると、手間がかかるものです。一方で、誰に対しても「◯◯様」と書くなら、一人ひとり別々に考える時間は不要です。

距離が縮まっているはずの相手から、ビジネスメールで「◯◯様 いつもお世話になっております」と書かれ続けるのがどうしても嫌なら、「そろそろ◯◯様はやめませんか? ◯◯さんと書いてほしい、と私は思っています」と直接話してみるのもありでしょう。

相手が特に賛同してくれるわけではなく、「ビジネスメールでは、どんな人に対しても『◯◯様』と書くことにしているから」と言うなら、じゃあ仕方がないね、と納得がいくはずです。自分の考えを強要するのはNGですが、距離が縮まっているのなら、聞いてみるくらいは問題ないでしょう。

SlackやLINEなどのチャットツールは、短文やスタンプをテンポよくやりとりするのが様式美であるように、ビジネスメールにもそれなりの様式美があります。そう考えると対面とメールでの差は気にしすぎなくてもいいのではと思います。

(構成=池田園子)
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