「話が違うじゃないか」と押し問答の末……

ボタボタ汗をかきながら部屋を出るBさん。部屋に残されたぼくとAさん。Bさんの不審な行動もあり、気まずい沈黙が流れます。

「Aさん、暑いですか?」
「……いえ、大丈夫です……ちょっとBさんと話してきてもいいですか?」

AさんもBさんを追って部屋を出てしまいました。ぜんぜん帰ってきません。話がもめて、帰っちゃったかな。でも荷物は置いたままだしな。会社の前でもめごと起こされたら恥ずかしいな……。

しばらくして、AさんとBさんが戻ってきました。まだ話はまとまってないようでした。

「だから話が違うじゃないか、さっきの人、1000万って言ってた」
「いや、違うんだって。実際はそんなに借りないから! 安心して!」
「じゃ1000万って何なの?」
「あれはね、1000万まで貸してもらえるってだけで、そんなに借りないから!」
「本当に?」
「当たり前でしょ! ぼくがAさんのことだましたことある? ないでしょ?」

部屋の入り口で話してるから全部聞こえます。

Aさんは半ば諦めた様子で、「はいはい、わかりました。ハンコ押せばいいんでしょ」。そう言って、担保提供の契約書にハンコを押してくれたので、無事Bさんに1000万円貸しました。

親族まるごと不動産を失う羽目に

Bさんは担保提供の常習犯なんです。定期的にぼくのところへ話を持ってきます。

「ちょっとテツクルさん、聞いてよ!」
「どうしたの?」
「こないだ借りた、よその街金ひどいんだよ! 結局、名義取られちゃってさ!」
「Bさんのものじゃないのにどうするの?」
「まあ、担保提供してくれた人は大丈夫。俺が絶対買い戻すからと宣言してるから」
「買い戻せるの?」
「まあ今度、高尾の2万坪を仕入れて分譲するから、それで返せるよ、大丈夫」
「高尾の山奥分譲して誰が買うんだよ……」
「仕入れるお金、貸してもらえない?」

Bさんは担保提供で借りたお金を、ほかの債務の利払いや生活費にあてて、本業の不動産業の売上げは散々です。

「テツクルさん、ごめん!」
「何?」
「こないだ話した担保提供者、口説けなかったわ! また次探すから!」

テツクル『ぼく、街金やってます』(ベストセラーズ)

そんなBさんですが、ついに担保提供者のネタ切れ。虎の子だったBさんの自宅もいまではぼくの会社の名義になりました。Bさんは家賃を払って元自宅に住んでいます。

そんなBさん、自宅だけでなく息子や義理の息子の自宅まで、一族郎党の所有不動産を最終的に売ることになったり、ぼくの会社の名義になったりで、すべてを失いました。

Bさん包囲網も最終段階だと思ってました。でも、あいかわらず電話がきます。

「テツクルさん! いい物件見つけた! 仕入れ資金貸して!」

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