“匿名掲示板”化するのを予想した人は少ないはず
そのためLINEは、LINEアカウントに紐付いていながらも、チャットルームごとに自分の本名に紐付くものだけでない、親しい間柄だけでない、別のアイデンティティーを持つことができる場を必要としていた。これは、Twitterで若者が複数のアカウントを所属するコミュニティーごとに使い分けているやり方に近い。
その上で、チャットルームを作った「管理者」が、入れる人や過去のトークをさかのぼれることの可否を決められるようにもした。特定の議題について話し合う「場」としてのコントロールをしやすくするためだ。
この発表の段階で、LINEのOpenChatが「匿名性の掲示板」のように使われると予想した来場者は少ないはずだ。狙いはあくまで、「LINEを軸にして複数コミュニティーへの帰属とアイデンティティーの使い分け」をすることだ、とされていたからだ。
「未成年が利用すべきでない場所」としてもいいのでは
LINEとしても、「匿名性の掲示板」的なコミュニティーになることは想定済みだったようだ。だが、現実にはそうはうまくいかなかった。想定以上に野放図な利用を促してしまった、というのは想定外だったのかもしれない。
取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳氏は、OpenChat開始後に、Twitterで次のように発言している。
オープンチャット、ネット原始を思い起こさせるコミュニティと受け取ってもらえてますね。若いコたちからすれば新鮮な体験かも。ニックネームだからこその気軽さ。トークだからこそのレスポンス。
— 舛田 淳 Jun Masuda @ LINE (@masujun) 2019年8月20日
一方、その世界を守るためには一定のルールが必要です。
下記の運営方針で適切に対応していきます。 https://t.co/Oh9WZMRoP5
「オープンチャット、ネット原始を思い起こさせるコミュニティーと受け取ってもらえてますね。若いコたちからすれば新鮮な体験かも。ニックネームだからこその気軽さ。トークだからこそのレスポンス。一方、その世界を守るためには一定のルールが必要です。下記の運営方針で適切に対応していきます」
今の30代以降ならば、「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)に代表される「匿名掲示板」の世界を知っている。だが、人々のコミュニケーションの中心がSNSになった現在、掲示板全盛期の自由闊達さを体験したことのない若者がいても不思議はない。
一方で、LINEはやはり、コミュニケーションプラットフォームとして大きな責任を持つ企業だ。LINE上でのコミュニケーションの悪用対策が続けられてきたのと同様に、OpenChatも悪用対策が必要だ。そのことは彼らもよく分かっているだろう。
一方で、年齢確認や年齢認証は、もっと厳しくてもいいのではないか。OpenChat自体を「未成年が利用すべきでない場所」と位置づけてもいいのではないか。
こうした状況の中で、どのようなバランスのサービスにしていくかが問題だ。筆者としてはやはり、「未成年層に利用をオープンにする」よりも、それなりの規制を設けた方がいい、という立場だ。LINEはこれから、OpenChatという場をどのように扱っていこうと考えているのだろうか。