ユニークなものがある一方、性犯罪につながるやりとりも

結果どうなったか?

まさに「オープンなチャット」になったため、あらゆる話題のチャットルームが出来上がった。ひたすら「セミ」のまねをするチャットルームや、存在しない学校のクラスと見立てて「クラスの会話」を模して楽しむチャットルームなど、ユニークなものも生まれた。もちろん、ゲームやアイドルなど、好きなものについての話題を共有するものもある。

だが、同時に「未成年が利用するには不適切なチャットルーム」も多数生まれた。援助交際の情報を交換するチャットルームや、アダルトな写真などを貼り付け合うチャットルームがそれに当たる。

LINEのチャットが、まるで少し前のインターネット上の大規模掲示板のように、なんでもありで無秩序な場になったのだ。

もちろん、LINEも対策は講じている。不適切なメッセージの自動削除や、未成年のチャットルームへの参加制限など、今も対策は続いている状況だ。

だが、である。

「オープンにチャットができる場」を作ることで、そこが無秩序になることは容易に予想ができたはずだ。なのにLINEの対策は後手後手に回っている。

利用者は「複数のアイデンティティー」を使い分けるように

そもそも、LINEはなぜこのようなサービスを開始することになったのか? それは、LINEというコミュニケーション手段が多様化したからに他ならない。

OpenChatは、6月28日にLINEが開催した年次プレスイベント「LINE CONFERENCE 2019」で発表された。

LINEがそこで説明したOpenChatの導入理由は「LINEが親しい人との間だけのツールではなくなったから」だった。

例えば会社の出退勤連絡、マンションの管理組合の連絡、PTA活動のコミュニケーションなどがそれに当たる。LINEは「利用者自身」が誰かを明かして使うコミュニケーションツールだった。本人が誰かが分かっているから安心だった部分があるが、LINEが広がり、世の中での使われ方が変化していくと、ひとつのアイデンティティーだけでは使いにくい場面が出てくる。

上級執行役員LINEプラットフォーム企画統括の稲垣あゆみ氏は、OpenChat発表の場で、「複数のアイデンティティー」が必要な場として「保育園のLINEグループ」を挙げた。

LINEは個人のアカウントなので、彼女は娘さんの保育園のLINEグループに、自分の名前で登録している。だが、参加している園児の親同士の間では、「園児の名前」は覚えていても、親の名前は必ずしも覚えていない。その場でのアイデンティティーは、あくまで「○○ちゃんのママ」であり「○○ちゃんのパパ」だからだ。