一流の選手ほどシューズをこまめに履き分けるワケ

ランニングシューズの売り場は、「フルマラソン3時間以内」「同3時間半以内」「同4時間以内」「同5時間以内」といったようにフルマラソンの走破タイムで分類されていることが多い。「タイム=走力」という考え方で、そのタイムで走るためのスピード(ペース)に適したシューズを紹介しているわけだ。

ナイキは、こうした「タイム=走力」によるカテゴリー分けではなく、「フリー」「ズーム」「リアクト」という3つのシリーズを設けている。順番に、STRONG(鍛える)、FAST(スピード)、LONG(長距離)に向いたラインナップだ。前出の新シューズはそれらとは異なる「ジョイライド」(EASY・快適)という4つめのカテゴリーとなる。

元箱根駅伝ランナーである筆者は大学時代、レース&スピード練習用(キロ3分20秒以内)、距離走用(キロ3分30秒~4分00秒)、ジョグ用(キロ4~6分ペース)と走るスピードに応じて、だいたい3種類のシューズを履き分けていた。

シューズの違いは、主にソールの厚さにある。レース&スピード練習用はソールが薄く、とにかく軽いもの。走るペースを落とすごとにソールが厚くなり、シューズも重くなっていく。

現在は、以前本欄でリポートした「ズーム ヴェイパーフライ 4%」などナイキの厚底シューズが世界のメジャーレースを席巻しているように、ソールが「厚くても軽い」シューズが人気を集めている。

「厚底ばかり履いていると、かえって故障のリスクが高くなる」

男子マラソン日本記録保持者の大迫傑
写真提供=ナイキ
男子マラソン日本記録保持者の大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)

男子マラソン日本記録保持者の大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)もナイキの厚底シューズを着用して、結果を残してきた。かといって普段から厚底シューズばかりを履いているかというとそうではない。

最近は「フリー」を積極的に活用しているという。「フリー」は、従来のスポーツシューズよりも足を自由に屈曲させ、動かすことができるシリーズ。“裸足感覚”の履き心地が、自然な足の動きを提供して、「人間本来の足の力」を取り戻すことをコンセプトにしている。

大迫は言う。

「近年は厚底シューズがはやっていますが、そればかりを履いてしまうと、かえって故障のリスクが高くなるのではないかと感じています。厚底シューズができただけに、『フリー』を使うことも同じぐらい大切です。最近は脚に負担の少ないトレッドミルや、イージーランのときに『フリー』を履いて、足本来の力を高めることにも重点を置いています」