ナイキの新しいランニングシューズが話題だ。靴底に1万個の「ビーズ」が仕込まれていて、履く人によって形が変わるという。元箱根駅伝ランナーの酒井政人氏は「『エア』や『厚底』など、ソール開発に異様な執念を燃やすナイキならでは。狙いは靴選びの概念を変えることだろう」という——。

1万個のビーズがソールに詰められたナイキの新シューズ

毎年2月に行われる「東京マラソン」は、1万6200円の参加料が必要だが、ここ数年は40万人以上がエントリーするほどの人気だ。走ることのイメージは、「苦しい」から「楽しい」に大きく変わったといえるだろう。

そうしたマラソンのイメージチェンジに貢献したもののひとつが「ランニングシューズ」の進化だ。各メーカーはソールなどの新機能を競うように開発している。

写真提供=ナイキ
ナイキの「ジョイライド ラン フライニット」(税別1万8000円)。

特に直近でユーザーに衝撃を与えたのが、ナイキが8月15日に発売した「ジョイライド ラン フライニット」(税別1万8000円)というモデルだ。この靴のソールは4つのポッド(袋)で構成されており、内部に色鮮やかな小さなビーズが入っている。その数は約1万個(メンズ28cmで片足約1万1000個、ウィメンズの25cmで片足約9000個)。ビーズは目に見えるので、デザインにはインパクトがある。しかも高い機能性もあるのだ。

ビーズの大きさは約1mm程度。ゴムの性質を持つ熱可塑性樹脂であるTPE(サーモプラスチック・エラストマー)という素材でできており、着地時のエネルギーリターンに優れている。ポッド内でビーズが動くため、走るほどにビーズが足の形に変化して、個々の足にカスタマイズされていくという。

「ジョイライド ラン フライニット」の発表会は韓国で行われ、ソウルの街を駆け抜けるランニングセッションも実施された。新シューズに足を入れると、何やら前足部に今までのシューズになかった感触を抱く。最初こそ驚いたが、走っているうちにビーズが足になじんでいき、心地よいクッション性を楽しむことができた。