事前に「聴き手」の頭の中を知り尽くす
それでは、この大原則を守るために、具体的にどんなアクションを起こせばいいのか。話がつまらないと思われることを回避するために、絶対に欠かせないのが、聴き手のプロファイリングです。
ここでいうプロファイリングとは、聴き手に関する情報を事前に集め、分析・把握することです。話のおもしろさを決めるのが聴き手であるならば、その聴き手を知ることから始めなければなりません。事前にできるだけ聴き手のことをリサーチして、情報を集めておくのです。
このプロファイリングですべきことは、じつは一つだけです。
それは、話しはじめる前の段階で、説明する内容がいま聴き手のなかでどんな位置づけになっているのかを確認し、説明することで、聴き手をどこまで導けばいいのかを設定することです。これが「つまらない」を回避し、話をおもしろくするためのプロファイリングにおける最大の目標です。
つまり、聴き手の頭の中を把握するためには、次の2つの視点でプロファイリングを行っていくことになります。
視点1:聴き手の現在地
視点2:聴き手の到達点
もちろん、この段階では、推測の域を出なくてもかまいません。大切なことは、できるだけ聴き手の頭の中の状態を知ろうとすることなのです。まず、視点1「聴き手の現在地」から説明していきます。
ヒアリングか事前アンケートができればベスト
プロファイリングをしていくうえで最初に知るべきことは、話そうとしている内容が現在、聴き手のなかでどんな状態にあるかということです。これから自分が説明しようとしているネタ(素材)について、聴き手はどれくらいの情報量をもっているのか。あるいは、どれくらい理解しているのか。興味関心はどの程度あるのか。そういったことを探ります。
具体的な方法としては、聴き手に直接ヒアリングできたり、事前アンケートやテストなどを行うことができたらベストです。私も企業研修で登壇させていただくことがあるのですが、そのときは可能なかぎり、企業の人事担当や受講生の方々にヒアリングや事前アンケートを実施します。そのうえで、研修で話す内容をアレンジするのです。
なお、予備校の授業では、事前アンケートなどはほとんどできません。そのため、授業前に生徒からヒアリングするか、あるいは講義の冒頭にテストを実施します。通常、テストといえば、一定のカリキュラムが終わってから理解度を確認するために行うことが一般的ですが、私の場合は、生徒の理解度にバラツキがありそうな単元やテーマを説明するときに、あえてテストを先行させます(このようなテストを「診断的評価」といいます)。