学生の「ブラックリスト」が作られる恐れ

一方で、個人情報が本人の利益にならない形で利用されるケースも予想される。仮に本人が情報提供に同意していたとしても、それをもってその個人が不利益を被るような情報を作成することは問題ないのだろうか。

今回の場合、内定辞退率が高いと判定された個人について、会社が選考過程でそれを利用することはない、とされている。だが、あくまで、利用しないという合意だけで、本当にそうした利用をしなかったのか、疑問は残る。もし、リクナビで記録された学生の行動による判定で、内定が出されなかったとすれば、学生は提供した情報によって不利益を被ったことになる。こうした情報利用は無条件に許されるのだろうか。

実際、クレジットカードの利用代金支払いが遅れたり、支払いが滞ったりした場合、その利用者の信用情報にマイナス評価が付く仕組みがある。Eコマースの利用などでも、支払いが滞れば、問題がある顧客として評価される。いわゆるブラックリストである。一般的に個人情報をこうした顧客評価に使うことは許されてきた。

「だれが、なにを考えているか」も簡単に予測できる

利用するメールアドレスなどから個人情報を「名寄せ」することが簡単にできるようになり、個人の姿や行動をデータとして企業などが利用する頻度は増している。

どこで何を食べたか、どの交通機関を使ってどこからどこへ移動したか、誰と会ったか、何を買ったか。定期的な行動バターンが把握され、次の行動が予測される。便利な情報社会で生きていく対価として個人の行動が把握されることは致し方ない時代になったということだろうか。

だが、個人の嗜好や趣味のデータ把握がさらに進んでいけば、個人の思想信条なども容易にデータ化されることになるだろう。支持政党といった単純なものだけでなく、どういった情報に関心を持つかなども第三者に把握されることになる。すでに国政選挙などでは、こうした個人データをベースに得票を予測する動きも出ている、という。