「企業と学生の双方にメリット」というが…
リクルートキャリアが提供していたサービスは、同社が2018年3月から始めたもの。契約先の会社A社に対して、A社から内定を得た学生がどれだけA社の内定を辞退しそうか、5段階に分けて判定した結果を提供していた。
判定の仕組みは、前年度にA社の選考・内定を辞退した学生がリクナビ上でどんな行動を取っていたかなどのデータを、分析してアルゴリズムを作成。現在A社から内定を得ている学生の行動と照合していた、という。
問題発覚後、リクルートキャリアが発表したニュースリリースによると、学生が同社の就職情報サイト『リクナビ』に登録した際に同意した「プライバシーポリシー」に基づいて「リクナビサイト上での行動履歴の解析結果を取引企業に対して提供していた」という。
さらにリクナビはこの情報を「合否の判定に活用しないこと」に契約先企業から同意を得ていたとした。つまり、この学生は辞退する確率が高いから内定は出さない、といった使い方はしていない、というわけだ。
リクルートキャリアはこのサービスについて、「企業は適切なフォローを行うことができ、学生にとっては、企業とのコミュニケーションを取る機会を増やすことができます」と双方にメリットがあることを強調している。
もっとも、こうしたサービスに個人情報が使われていることについて、リクナビを利用した学生の同意が不十分だったとして、リクルートキャリアはサービスの休止を発表した。「リクナビの複数の画面で同意を求める設計だったにもかかわらず、一部の画面でその反映ができていなかった」と非を認めている。
中止の理由は「本人同意が不十分だった」から
ウェブ上の行動や買い物などのデータを基に、個人にスコアをつけるサービスは日本国内でも、さまざまな分野で広がりつつある。イーコマースだけでなく、クレジットカードの利用履歴などから、将来の購買動向を予測し、ダイレクトメールを送信することなどは普通に行われている。ウェブサイトを閲覧した際に現れる広告が、自身がかつて閲覧した商品の広告だった経験を持つ人は多いだろう。それも、過去の行動データを基に関心が高いと思われる商品広告を掲示するサービスだ。
リクルートキャリアがサービスの休止を発表したのは、個人データを解析した予測を第三者に提供したからではなく、その「本人同意」が不十分だった、というのが理由だ。つまり、本人同意さえきちんとしていれば、そこに問題は生じない、というわけだ。
もちろん、本人同意といっても、チェックボックスにチェックを入れたり、ボタンをクリックしたりすることで済む。利便性の高いウェブ上のサービスを使うために、同意のチェックが必要となれば、本来はプライバシー情報の提供に乗り気ではなくても、チェックしてしまうだろう。個人情報を提供する積極的な意思を示しているのではなく、他のサービスにつられて、同意しているケースが多いのではないか。