もう1つは、商品ラインナップの拡張です。例えば、グリコのポッキーはさまざまな種類(味覚)のサブブランドを展開しています。パッケージのリニューアルと同時に、味などのバリエーションを増やして、消費者が飽きない工夫を施しています。
近年では、原材料費の高騰や人手不足などを背景に、メーカーはコスト増の傾向にあります。そこで、増えたコストをそのまま価格に反映させるのではなく、価格を変えずにサイズを小さくしたり量を少なくしたりすることで、実質的な値上げをする手法が飲食料品を中心に一般化しています。
「ダイナミック・プライシング(変動価格制)」の動き
メーカーや小売業では、このように価格を変えないことが重視される傾向があるのに対して、サービス業では、価格を段階的に変動させる「ダイナミック・プライシング(変動価格制)」の動きが広がっています。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、日本の大手テーマパークでは初めて、19年1月から変動価格を導入しました。もともと7900円だった1日入場券を、正月休み明けから1月末までの閑散期は7400円、春休みシーズンの繁忙期には8700円などに変えたのです。背景には、入場者数が17年まで4年連続で過去最高を更新する中で、繁忙期にパーク内が混みあうことによる顧客満足度の低下があります。
変動価格にすることで、2つのメリットがあります。1つは、繁忙期の来場者の満足度が高まり、再来場(リピート)を促すこと。もう1つは、閑散期の価格を割り引くことで、それまで価格が高いと敬遠していた顧客を獲得できることです。
消費者にとっては、季節や曜日によって価格が変動するため、一見わかりにくいかもしれません。従来の日本では、こうした「差別価格制」は受け入れられにくい傾向がありました。しかし、近年、インターネットでの買い物が一般化して、航空チケットや宿泊などの価格が時期によって異なることが当たり前のように受け止められるようになりました。このことが、ダイナミック・プライシングが受け入れられることにつながったのではないかと思います。需給バランスによって価格が変わるということが、日本の消費者にも広く理解されるようになったのです。