中国全土には1億7000万台もの監視カメラが設置されており、さらに増え続けている。なぜ中国人は監視されることを受け入れているのか。ひとつの理由は「子どもの誘拐事件がよくあるから」だという。中国の監視社会の一端を紹介する——。(前編、全2回)

※本稿は、梶谷懐・高口康太『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

中国に本社を置く精密機械大手の監視カメラ
写真=AFP/時事通信フォト
中国に本社を置く精密機械大手の監視カメラ

日本の総人口よりも多い中国の監視カメラ

2017年12月、英BBCは中国の監視カメラシステムを取り上げました。2017年末時点で中国全土に1億7000万台もの監視カメラが設置されており、2020年までにはさらに4億台もの監視カメラが追加されると報じています。

近年中国の大都市を訪れた機会があるなら、駅などの公共施設および信号機周辺、さらに商業施設の出入り口などいたるところに多数の監視カメラが無造作に設置され、通行する人々に向けられているのにぎょっとした人も多いでしょう。

もちろん、日本だってすでに街中に多くの監視(防犯)カメラが張り巡らされているのですが、日本では人々に威圧感を与えないよう、なるべく目立たない形での設置が好まれるのに対し、中国ではむしろこれ見よがしに「監視しているぞ」と誇示する設置の仕方が多いように思います。

カメラの数だけではなく、画像を認識する技術も急速に進化しています。以下は筆者たちが2018年9月にAIを使って個体認識を行う技術を開発しているハイテク企業、Megvii社(メグビー、中国名で曠視科技)を訪問した際の話です。Megvii社はハイテク企業が集積する北京市海淀かいてい区に2011年に設立され、その後急成長したユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業)です。