これを受けて林鄭行政長官は法案の審議を無期限で延長し、法案は事実上の廃案になるとの見解を示しました。しかしそれに納得しない若者たちは立法会に乱入するなどの反対運動を繰り返し、その後も不安定な状況が続いています(2019年7月13日現在)。

彼らがマスクやゴーグルで顔を隠す理由

梶谷懐・高口康太『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)

一連のデモの中で目を引いたのは、参加者、特に若者たちのいでたちでした。揃いの黒いシャツにマスク、ゴーグル、ヘルメットなどを着用して顔を隠す参加者が目立ったのです。

さらには、デモに参加する際にはスマートフォンの位置情報をオフにしたり、SNSのメッセージをこまめに削除したり、さらに地下鉄に乗る際にも記録が残るプリペイドカードではなく現金で切符を買ったりするなど、「記録が残る」テクノロジーをあえて使わない「デジタル断ち」と呼ばれる行動が目立ちました。

これは、催涙弾から身を守り、当局にデモへの参加を把握されることを警戒するとともに、中国大陸なみの、顔認証などのAI技術を駆使した監視システムがいつか香港に導入され、行動の自由を奪われるかもしれないことへの若者たちの抗議の気持ちを表現したものだ、という指摘もなされています。(続く)

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