コーヒーの最高峰「1杯1万円」の価値とは?
「パナマ・ゲイシャ」というコーヒー豆がある。パナマ産ゲイシャ品種のことで、現在は世界最高峰の豆だ。
19年7月17日(現地時間16日)、コーヒー豆の国際品評会「ベスト・オブ・パナマ」で、「エリダ農園のゲイシャ」が1ポンド1005ドル(約10万8000円)で落札された。1キロ換算すると「約24万円」。もはや茶色のダイヤモンドのような存在だ。
落札したのは、サザコーヒー代表取締役の鈴木太郎さん。本店は茨城県ひたちなか市だが、東京駅に近い商業ビル「KITTE」内にも店があり、「パナマ・ゲイシャ」を目玉商品にする。
「近年はオークション価格も暴騰していますが、それでも落札を続けます。みなさんに『ゲイシャ』の魅力を知ってほしいのです」(太郎さん)
サザコーヒーは、太郎さんの父・鈴木誉志男会長が、半世紀前にひたちなか市で創業した個人経営の店(個人店)だ。19年1月17日には、テレビ東京系の経済情報番組「カンブリア宮殿」にも登場。店舗数はスターバックスの約100分の1だが、小さな実力者といえるだろう。
「1杯1万円のゲイシャも、ほぼ毎日注文がある」
現在は、日本人が「史上最もコーヒーを飲む」時代である。コーヒー輸入量は、直近の18年は45万2585トン。この数字は80年の2倍以上で、00年に40万トンの大台に乗ってからは19年連続で40万トン超だ(いずれも生豆換算の合計。財務省「通関統計」をもとにした全日本コーヒー協会の資料)。
こうした需要拡大の背景には、コーヒーの多様化もある。1杯1万円を超える希少価値のコーヒーから、1杯100円のコンビニコーヒーまで、ワインのように幅広くなった。
「サザコーヒーは規模が小さいから、仕入れ・加工・抽出に徹底してこだわれます。コロンビアに直営の『サザ農園』もあり、それ以外に世界中から良質のコーヒー豆を買い付けます。大手とは違い、仕入れから抽出まで同じ人がやることもある。私も海外でコーヒー豆を買い付け、店でコーヒーも淹れます」(太郎さん)
そんな手作り感と味が客に評価され、「KITTE店では、1杯3000円のゲイシャが1日に5~6杯出ます。1杯1万円のゲイシャも、ほぼ毎日注文があります」と話す。
筆者自身、KITTE店で次のような感想を聞いたことがある。千葉県から母親と一緒に来店した30歳の女性は、ゲイシャではないものの、1杯2000円という高級品種の「ジャンソン パカマラ」を注文。母娘でさまざまな高級豆を味わってきたというが、太郎さんが買い付けたパナマ・ジャンソン農園のパカマラは「1滴なめただけで、まるでエキスでした」と目を丸くしていた。