「いきなり!ステーキ」の登場で痛手を負った
さらに2013年に銀座に1号店をオープンしてから、あっという間に都心で店舗数を拡大した立ち食いステーキチェーン「いきなり!ステーキ」の登場は痛手だった。
「立ち食い」といえば、かつては「立ち食いそば」が主流だったが、近年では「立ち食いフランス料理」なども登場して話題を呼んでいた。
立ち食いスタイルは、運営企業にとっては収容人数の増加、店舗面積の縮小、賃貸コスト低減、回転率アップなどのメリットがある。
世の中にこうした“立ち食いトレンド”がある中、「ステーキを立ち食いする」という従来にはなかった発想で、「いきなり!ステーキ」は、「手早く、安く、上質な肉を食べられる」という新たな価値を生み出した。
このように、飲食業では、いかに業界のトレンドを取り入れ、多くのリピーター客をつかむかが成功の分かれ道となるが、その点でステークスは読みを大きく誤ったといえる。
世の中での肉ブームの高まりの中、2014年、ステークスは新たにフレンチの要素を入れた「ヌーヴェルケネディ」を3店舗、開店する。この新コンセプトが、悪化しつつあった業績の起爆剤となることを期待し、2015年12月期には、「5年間で150店体制、年売上高100億円を目指す」という中期経営計画を策定していた。しかし波に乗ることができず、不採算店舗が増えていく。倒産前の2年間で3割の店舗を閉鎖し、2015年12月期には赤字に転落していた。
「心配はいらない」と強気だった会長
情勢が急変したのは、2017年10月2日のことである。「ステークスが店舗を閉鎖させて破産を申請したようだ」といった声が複数寄せられる。品川の本店と笹塚店には、店舗入り口に10月2日の日付が記された「閉店のお知らせ」の紙が張られていた。内容は「全店舗の営業を、10月1日をもって終了させていただきました。店舗を運営するステークスについても円滑なる債務の支払いが不可能な状態に陥ったため、10月1日をもちまして営業を停止するとともに弁護士に依頼し、東京地裁に破産申し立てを行なう所存です」といった主旨のものだった。
結局、ステークスは2日付で全店舗を閉鎖するとともに、36名の正社員に対して解雇を通知。東京地裁へ自己破産を申請し、同日、同地裁より破産手続き開始決定を受けた。
突然ともいえる倒産だったが、経緯を調べると、2017年1月には金融機関から借入れ金の返済猶予を受けていたほか、複数の取引先に対する支払い遅延やサイトの延期要請など、兆候はあったようだ。会長は、先を危ぶむ取引先に「心配はいらない」と説明し、その強気な態度によって取引先は信じてしまったようだ。