試算すると次女は平均余命前の76歳で貯金が底をつく
Aさん自身の今後の家計を見通すために必要だからと、母の資産状況などをざっくりと聞いてもらってCF表を作成しました。CF表の説明には母も立ち合いました。
1.相談者Aさんと母と兄3人分をひとまとめにしたCF表
2.相談者Aさん個人のCF表+母と兄のCF表(グラフ参照)
その説明の中で、母からは「次女のことも心配している」「自分の相続の際は、一人で頑張っている次女に考慮したい」という言葉が出てきました。母は、働くことができている次女が不安を抱えていることを、初めて知ったようでした。
ただ、試算した相談者Aさん個人のCF表は平均余命前(76歳)でマイナスという厳しい結果になりました。この試算では、母が現在持つ資産は反映しませんでした。その理由は、今後の生活で財産が減る可能性があること、また実家がすでに長男のものになっている関係上、母は今後、自分の財産を利用して有料老人ホームへの入居を検討していたこと、の2点。そこで、試算時は、母が他界した際に支払われる保険金をきょうだい3人で均等に分けたものとして計算しました。
いざというときは兄との同居や生活保護もやむを得ない
体力的に自信がないので、Aさんは近いうちに退職を希望していましたが、60歳まで働いてもCFがマイナスだとわかったことから、少なくとも60歳まで、できれば65歳までは今と同等の収入を得られるように仕事を続ける気になったようです。
Aさんは、この試算を踏まえ、いざというときは兄に同居をお願いしてみることや、生活保護もやむを得ないという将来の結論を、自ら導き出しました。
Aさんの未来は、経済的に安泰ではありません。母の相続時には長女の意向も気になります。けれど、未来を数字で見通してみたことで、不安の正体も見えてきて、頑張れそうなこと、納得して諦めることなどを自身で考えようとしています。
母がひきこもっている兄を気にかけるのは当然と思いつつも、不平等な処遇をあっさり受け入れることもできないし、そのことを言うこともできずにきたモヤモヤが完全に消えたわけではなさそうです。それでも、現実的な「お金」の話を少し母とできたことで、そのモヤモヤがいくらかは軽減されたように見受けられました。