金正恩の「まさかの身売り」に慌てる習近平

金正恩氏が見せた、トランプ政権への「まさかの身売り」にもっとも慌てているのは、習近平政権であろう。金正恩氏を「三胖(三代目のデブ)」などと呼んでいた習近平氏は、上海閥を徹底的に粛清し続ければ、いずれ正恩氏は北京に対して詫びを入れてくるだろうと踏んでいた節がある。その正恩氏が、いくら史上初の米朝会談を単独でやってのけたとはいえ、あのトランプ氏の懐にあそこまで見事に飛び込むとは予想だにしていなかったに違いない。

G20の直前に急に決まった、2019年6月20日と21日の習近平氏の訪朝にしても、表面上は金正恩氏の招きに応じた格好になっているが、習近平氏としては金正恩氏を何とかして米国側から引き離しつつ、同時に旧瀋陽軍区と上海閥からも完全に切り離して、みずからの側につけねばならないと考えていたはずだ。

そのためには、何としても北朝鮮の非核化を実行して抵抗の根を断ち切り、トランプ政権に近づく北朝鮮を自分たちの方に引き戻さねばならない。だが、金正恩氏は非核化への要請にはまったく反応しない。ここが習近平氏にとっての最大の頭痛の種であろう。

中国国内の習近平政権対上海閥という積年の争いが、北朝鮮開発という巨大利権を巡って今や米国内に波及し、それがトランプ派対米国エスタブリッシュメント層という米国内の激しい権力争いにも影響を与えている。その中で「金王朝」の人々が、時に右往左往し、また時には荒ぶるふりをしながら、ひたすら生き残りを図ろうとしているのである。

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