スペイン当局はホン氏が実行した襲撃事件を、「個人では調達できないほどの十分な支援インフラと資金をバックにした、極めて綿密な作戦」であったとみている。過去にリビアの秘密作戦にも関わり、北朝鮮に狙われている金漢率氏を中国から台湾経由でCIAの庇護のもとに米国に脱出させられる力を持つホン氏の正体とは、まさに情報機関員そのものである。
ちなみにこのホン氏は、大使館襲撃時に使ったレンタカーを予約する際、「オズワルド・トランプ」という偽名を使ったとされている。オズワルドとはケネディ大統領暗殺事件の犯人とされた男の名前であり、こんな不気味なコードネームを使うホン氏の背後には、トランプ氏の排除を望み、北朝鮮の金正恩体制を破壊して、金漢率氏を首領とする傀儡政権を擁立したいと考える、米情報機関の姿が見え隠れしている。
米情報機関とトランプの水面下の暗闘
事実、トランプ政権はこれまで米情報機関の主流派と水面下で激しい暗闘を演じてきた。2017年2月18日付『インディペンデント』は、元NSAの情報分析官ジョン・シンドラー氏が情報機関の高級幹部から受け取ったというメールに「(トランプ氏は)刑務所で死ぬのだ」(カッコ内著者)と書かれていたことを報じているし、元米陸軍の情報将校でコラムニストのジェフ・スタイン氏は、『ニューズウィーク』(2017年1月23日)に寄稿した『CIAを敵に回せばトランプも危ない』という記事の中で、「トランプも、得意先には逆らうな、という格言をわきまえるべきだろう」という恐ろしい警告文を載せている。
また、オバマ政権第一期目に国土安全保障・テロ対策担当大統領補佐官、第二期目にはCIA長官を務めたジョン・ブレナン氏は、トランプ氏のことを「一時的に錯乱(している)」「裏切り者」などと呼び、その敵対的な姿勢によってトランプ政権から機密情報へのアクセス権を剥奪されている。同氏は敵対勢力の「殺害リスト」を作ってドローンによる暗殺作戦を推進し、2016年の米大統領戦においてはヒラリー氏を支持し続けた人物だ。