グーグルレンズがすでに大きな実用価値を持つのは、文字の認識です。とりわけ、それほど長くない文字列や文章の認識であり、すでに実用段階に達しています。この機能をうまく利用することによって、仕事の能率を大きく上げることが可能です。具体的な使い方としては、以下のようなものがあります。

(1)検索

これまで意味が分からずに放置していた言葉がたくさんあるはずです。それらの意味を、グーグルレンズで簡単に知ることができるようになりました。これまで毎日見ていたもの、何気なく見ていたものが、新しい意味を持つようになります。

ある言葉が分かると、つぎつぎに他の言葉の意味が知りたくなってきます。調べた新しい言葉から、新しい世界が広がるのです。独学の第一歩は、このようにして、簡単に踏み出せます。

(2)印刷物の情報をテキスト化

翻訳したい文章があれば、グーグル翻訳にシームレスにかけて和訳できるので、外国語の書籍を読むのがきわめて楽になりました。中国語、韓国語、ロシア語などの新聞記事や文献も簡単に読めます。

また、音声で読み上げてくれる機能は、勉強に使えます。とくに、独学の強力なアシスタントとなります。外国語の独学は、いまやきわめて簡単になりました。

(3)URLの読み取り

URLを読み取るために、現在ではQRコードが広く使われていますが、グーグルレンズは、URLを元の文字のままでも読み取ります。このため、「URLを提示して、それを読み取ってもらい、サイトに誘導する」ということを、誰でも簡単に実行できるようになります。これは、広告のビジネスモデルを大きく変える可能性を持ちます。

(4)資料やデータの整理

グーグルレンズは、名刺を撮影して、そこから名前、電話番号、メールアドレス等を自動的に識別して抽出し、アドレス帳にシームレスに登録します。また、「メール」というボタンを選択すると、メール作成画面が開き、読み取った相手のアドレスが入力された状態になっています。したがって、本文を入力するだけで、ただちに発信することができます。

また、グーグルレンズを活用すると、新聞記事の切り抜き作業から解放されます。また、領収書の情報をテキストに変換することもできます。

AIの画像認識をうまく使えば、仕事と生活は大きく変わります。そして、その際にきわめて重要なのは、情報を「捨てる」のではなく、「検索する」という発想なのです。

野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。近著に『入門 AIと金融の未来』『入門 ビットコインとブロックチェーン』(PHPビジネス新書)など。
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(写真=iStock.com)
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