「捨てること」をやめて「検索する」

あまりに簡単に情報を生産したり入手したりすることができるようになったため、われわれは新しい情報洪水に呑み込まれそうになっています。呑み込まれるのは、情報を扱う基本的な考えが、従来のままで変わっていないからです。

とくに問題なのは、「いらない情報は捨てなければならない」という考えです。情報が紙の書類であった時代には、これは正しい考えでした。いらない情報を抱えていては、新しい情報を収納する場所がなくなってしまうし、必要なものが見つけられなくなるからです。

しかし、この考えをAIの時代にも実行しようとすると、大きな困難に直面します。情報が増える度合いがあまりに速いため、捨てようとしても、とても追いつかないのです。「情報に呑み込まれてしまう」ことになるのは、このためです。

他方で、デジタル情報については、収納する場所の制約を考える必要がなくなっています。さらに、検索をすることが容易になっています。そこで、基本的な考えを大転換し、「捨てる努力をせずに、検索できる仕組みを作る」ことに努力を振り向けることにします。

すると、まったく新しい可能性が開けるのです。その1つの例が、「超」メモ帳です。これは、音声入力を用いて検索することによって、大量の情報を管理しようというものです。

これは、AI時代のメモ帳であり、紙のメモ帳とは比較にならないほど強力です。スマートフォンに付属しているメモ帳と比べても、想像もできないほどの便利なメモ帳ができます。キーワードをうまく設定すれば、無限とも言える量の情報を保存しても、使いたいファイルをすぐに引き出せますし、重要なファイルを見失ったりすることがありません。

画像認識をうまく使えば仕事と生活が変わる

画像認識の機能も、新しい可能性を開いてくれます。画像認識アプリ「グーグルレンズ」の機能を、大きく2つに分けて考えると、分かりやすいでしょう。

第1は、カメラが撮った画像が何であるかを識別する機能です。第2は、書籍などに印刷されている文字を判読する機能です。これらの各々について、現在のグーグルレンズの能力は、およそつぎのようなものです。

写真画像の判別能力については、バラの花をバラと認識することはできます。しかし、バラの種類を教えてくれるまでにはなっていません。人間の顔も識別します。ただし、欧米の俳優は、かなり正確に認識するのですが、政治家は、トランプ大統領やオバマ前大統領であっても認識できません。この機能については、実用段階には達していないと考えざるをえません。