国内外のご公務の際は、出された食事を残しては失礼にあたることから陛下は残さずに食事を召し上がる。
「長期のご公務からお戻りになったら、パンがゆ(ミルクを沸かして賽の目に切ったパンをちぎったもの)や、チキンのブイヨンにレタスをちぎったものといった、消化が良く、胃にやさしいものをお出ししました」
工藤氏が考える健康長寿の秘訣を聞いたところ、「自分のしたい仕事があること、時を超えて会える友達がいること、家庭に団らんがあること」と、一見、食生活とは無関係の言葉が飛び出した。
「家庭料理で重要なのは、作り手が家族のコンディションと、好きなものやどういった食べ方が好きかを知っていること。そのうえで『今後はあなたの健康を考えて油をひかえて薄味にする』と伝えたとき、相手がどう反応するか。仕事があり、友人がいれば、作り手の思いやりに素直に感謝するでしょう。家庭に団らんがなければ話し合いにもなりません。年を重ねるごとに、食卓を平和に保つ“政治”が作り手にも食べる人にも必要になるんですよ」
▼和食レシピ
牛肉の大和煮、粉ふきいも添え
(2人分)
1.牛ロース薄切り肉(80g)を食べやすい大きさに切る。鍋に水(200cc)を入れて強火にかける。沸騰したら牛肉を入れてさっと茹で水気を切る。 2.鍋に1とA(水100cc、生姜薄切り20g、濃口醤油大さじ1、みりん大さじ1、酒大さじ1)を入れ、強火で火を通す。水溶き片栗粉(大さじ1)を回し入れとろみをつける。 3.粉ふきいもは、じゃがいも(中2個)をそれぞれ4つに切ったものを茹で、茹で汁を捨てる。中火で鍋を揺すりながらいもに粉をふかせる(自然に角がとれる)。塩(小さじ1/3)、コショウ(少々)を加え、汁気がなくなるまで鍋を揺する。◆昭和天皇が好んだいも料理はよく献立に上がった。
ごぼうと鰻の柳川風
(2人分)
1.ごぼう(60g)は皮をこすって泥を落とし、ささがきにして茹で、水気を切る。鰻の蒲焼き(1/2尾)は縦に短冊切りにする。三つ葉(1/4束)はざっくり短めに切る。 2.鍋に1のごぼうとA(だし200cc、濃口醤油大さじ1と1/3、砂糖小さじ1、みりん小さじ1)を入れて中火にかけて煮る。1の鰻を加え、溶いた卵(2個)を回し入れ、三つ葉を散らす。 3.ふたをして火を止め、3分蒸らす。◆昭和天皇の好物だったとされる鰻料理は、献上されたときに献立に上がった。