1面トップの特ダネは「フェイクニュース」だった
ハンセン病の元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、安倍晋三首相が控訴しないことを表明した。7月9日の午前中のことだった。
これに対し、朝日新聞は9日付朝刊(14版△)の1面トップで「ハンセン病家族訴訟 控訴へ」との見出しを付け、「政府は控訴して高裁で争う方針を固めた」と書いていた。安倍首相の控訴断念の表明によって、朝日の特ダネは紙面に印刷されてから6時間ほどで"フェイクニュース"であることがわかった。
ちなみにNHKは9日午前2時ごろ、「政府が控訴断念へ」とのニュースをネットで報じていた。
なぜ、朝日新聞は誤報を出したのだろうか。朝日新聞は9日付夕刊と10日付朝刊の一面に「誤った記事おわびします」と題した訂正・おわびの文を掲載して読者にわびた。
夕刊では「朝日は9日付朝刊で、複数の政府関係者への取材をもとに『控訴へ』と報じました。政府は最終的に控訴を断念し、安倍晋三首相が9日午前に表明しました」と書き、朝刊では「取材の経緯を2面に掲載しています」と付け足した。
夕刊と朝刊に計2回にわたって訂正・おわび記事を出したのは、地方の夕刊のない地域のためだろう。深い反省の意を示したわけではないと思う。
「取材を踏まえたもの」というのっけからの言い訳に驚く
2面に掲載された「取材経緯」の記事を見てみよう。書き出しはこうだ。
「元ハンセン病患者の家族への賠償判決に対する政府の控訴方針を報じた9日付記事は、政権幹部を含む複数の関係者への取材を踏まえたものでしたが、十分ではなく誤報となりました。誤った経緯について説明します」
のっけから「政権幹部を含む複数の関係者への取材を踏まえたもの」と言い訳がましいことを書いているところに驚く。もっと謙虚に反省の姿勢を読者に示すべきである。
それができないのは朝日が読者の存在を軽視しているからだろう。いまどきの言葉を借りて言えば、読者に対して「上から目線」で見ているからではないか。