組織そのものを改造しない限り、誤報はまた繰り返す
朝日の「取材経緯」の説明はこう続く。
「6月28日、熊本地裁が元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた判決を受け、朝日新聞は政治部、科学医療部、社会部、文化くらし報道部を中心に、政府がどう対応するのかの取材を始めました」
編集局内の複数の部の記者たちが取材していながら、なぜ誤報になるのか。編集局内の部と部の横の情報交換が足りないのではないか。編集局内の風通しが良くないのだろう。
もしそうだとしたら大組織にありがちな問題であり、根本的に組織そのものを改造しない限り、誤報はまた繰り返す。
朝日自身、「あとは安倍晋三首相の政治判断」と書いている
さらに「取材経緯」の記事は続く。
「法務省や厚生労働省、首相官邸幹部は控訴するべきだとの意向で、あとは安倍晋三首相の政治判断が焦点でした」
「首相は7月3日の党首討論会で『我々は本当に責任を感じなければならない』などと発言しました。しかし官邸幹部への取材で、この発言を受けても、控訴の流れに変わりはないと受け止めました」
沙鴎一歩も3日の党首討論をNHKテレビで見た。確かに安倍首相は「本当に責任を感じなければならない」と強調していた。そしてこの安倍首相の言葉と態度から「何かやらかすかも」と沙鴎一歩は考えていた。案の定、7月9日に控訴断念のという異例の表明が飛び出した。
どうして朝日は異例の事態を予想しなかったのか。
朝日は「官邸幹部への取材で、控訴の流れに変わりはないと受け止めた」と弁明するが、最後に判断するのは官邸幹部ではなく、安倍首相だ。朝日自身、「あとは安倍晋三首相の政治判断」と書いているではないか。そこまで理解しておきながら、なぜ誤報を書くのか。取材が甘いと批判されても仕方がない。