ホンハイはすでにインドでiPhoneXSとXRの生産を開始

それでは台湾は、“紅いサプライチェーン”から離れ、“世界のサプライチェーン”に移れるのだろうか。台湾政府の首脳部には、すでに独自のサプライチェーン構築に向けた青図があるようだ。

5月15日に開催された「アジア政治経済景気展望研究会」で行政院政務委員の龔明鑫氏は、将来、国際分業体制は実質的な変化を遂げるだろうとし、「政府は回帰した台湾企業をアップグレードさせ、“非・紅色サプライチェーン”を形成する」と述べた。そのために「台湾政府は東南アジア各国の政府と折衝している」(経済日報)という。

それはベトナムやタイなどに南下した産業立地を、ハイエンドの製造拠点である台湾とつないでネットワーク化させようという構想だ。すでに中国から撤退した台湾企業は、ベトナムやタイ、インドなどに生産拠点を形成しつつある。たとえばインド紙「インディア・トゥデイ」は、ホンハイはすでにインドでiPhoneXSとXRの生産を開始しているのではないかと報じている。

米中貿易戦争の結果、台湾企業は中国から離れつつある。それは中国から製造業を奪おうとする米国の思惑にも添う。ホンハイがiPhoneの新工場を稼働させるインドでは、「Made in India」を国策に製造業の集積を急ぐ。

モバイルに見るサプライチェーンの変化は、中国製造業の衰退を暗示するだけではなく、壮大なシャッフルが起きているとみたほうがいいだろう。そこで台湾は漁夫の利よりも大きい果実を狙っている。

姫田 小夏(ひめだ・こなつ)
フリージャーナリスト
アジア・ビズ・フォーラム主宰。1997年から上海、日本語情報誌を創刊し、日本企業の対中ビジネス動向や中国の不動産事情を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、語学留学を経て上海財経大学公共経済管理学院に入学、修士課程(専攻は土地資源管理)を修了。14年以降は東京を拠点にインバウンドを追う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、『インバウンドの罠』(時事通信出版局)ほか。
(写真=ロイター/アフロ)
【関連記事】
「宝くじ1等6億円」確実に当選する方法
老後に沖縄移住した人が悩む「ある出費」
富裕層は「スマホ」と「コーヒー」に目もくれない
韓国に広がる「日本どうでもいい」の理屈
米国にも無視される韓国政府の"被害妄想"