実際の人間の知能は結晶性知能と流動性知能が混合されたもので、知能の分野によってピークとなる年齢が異なります。

研究報告によれば「総合的な情報処理能力と記憶力」のピークは18歳前後とされますが、個々の知力の多くはそれよりもずっと遅く、たとえば相手の表情を読む力は48歳、仕事で用いる基本的な計算能力は50歳がピーク。自分が普段から行っている仕事への集中力も20代より40代のほうが高く、「新しい情報を学び、理解する能力」も50歳がピークです。

ビジネスの世界では新浪剛史サントリーホールディングス社長、知識賢治日本交通社長など40代から50代に企業経営者となり、違う環境に移っても成功する人が少なくありませんが、新しい情報を理解する力が50歳でピークになるのなら、それもうなずけます。

語彙力などは67歳がピークです。しかし、これもあくまで平均値であって、日頃から文章を読んだり書いたりしていれば70歳を過ぎても上昇していくのです。

メタ認知はスポーツでいう戦術眼のようなもの

知能は本来「領域固有性」を持っています。勉強で算数の能力が向上しても、普通は同時に国語の能力も上がるというわけにはいきません。

しかし双方の能力には脳科学的には共通因子があるので、工夫次第で異なるスキルを同時に引き上げる「汎化」が可能です。

それを容易にするのが「メタ認知」です。

メタ認知はスポーツでいう戦術眼のようなものです。サッカーではボールを蹴るのがうまい選手は多いですが、試合の展開を先読みしてパスを出したり、ポジショニングができる選手は貴重です。

Jリーグ創設当時に名選手として知られた元日本代表の木村和司さんは、初めて国立競技場のVIPルームからサッカー場を見下ろしたとき、「おれが試合中に見ていた光景はこれだ」と言ったそうです。ただ自分の目で見るだけでなく、自分の姿とその周囲の状況を上空から俯瞰した光景を脳内で想像しながらプレーしていたわけです。