そして宮迫さんたちの「嘘」だが、これは反社会的勢力だと知っていたのに知らなかったという嘘ではなく、一連の調査過程において嘘を付いてしまったというものである。もちろん、忘年会参加メンバーにおいて、お金を受け取っていないと口裏を合わせたことは悪質だった。

ただし今、世間においては、嘘を付いた! ということが厳しく非難されているが、では宮迫さんたちの嘘とはいったいなんだったのか?

もし犯罪、違法行為を隠すために嘘を付いていたというのであれば、仕事は完全に奪われる。しかし、反社会的勢力だと知らない相手からお金を受け取ること自体が、犯罪、違法行為なのか。

芸能事務所の言い分はこれからの時代に通用するか?

そして、ここで「闇営業」という言葉が独り歩きしたことから、話がおかしくなってきた。

結論からいって、宮迫さんたちが、吉本興業を通さずに、どこかのイベントに出演してそのままお金を受け取っても犯罪行為でもないし違法行為でもない。「闇」という言葉の使い方が不適切なのである。

吉本興業とタレントたちの間には明確な契約書が存在しないという。ゆえに、吉本興業を通さずに、タレントが仕事をした場合の扱いは、契約上どうなっていたのか不明だと思う。このような契約状況で、吉本興業のタレントが、事務所を通さずに直接に仕事をした場合は、吉本興業はそこまで強く非難できないはずである。事務所を通さない仕事を禁じるのであれば、合理的な禁止契約が必要になる。

(略)

もちろん、事務所がタレントを育てるのに、それなりのお金を使う場合があり、タレントを拘束することによって投下資本を回収する必要があるという事務所の言い分も分かるが、そうであれば、投下資本と拘束期間・拘束状態のバランスが取れていなければならない。タレントの育成に使ったお金以上に、タレントを拘束することは不合理である。ただし、事務所が投下した資本を回収するまではタレントを拘束するというこのような考え方自体が、かつての人身売買的な考えであり、これからの時代はどんどん通用しなくなっていくだろう。

ゆえに、現在、独占禁止法を芸能事務所とタレントの間に適用する議論が起きている。タレントの権利をしっかり守るべきだという時代の流れになってきたのである。

(略)

今回、処分を受けたタレントが、吉本興業から日々どれだけの仕事をもらっていたのかがポイントになる。仕事をもらっていないタレントが自ら仕事を探して、お金を稼ぐことまで否定されるのは不合理である。

ただし、宮迫さんや亮さんは、吉本興業から十分な仕事をもらっていた。ゆえに、彼らが吉本興業を通さない仕事を禁じられていても、ある意味仕方のないところであるが、ただしそれがきちんと契約になっていたか、その禁止条項が合理的かどうかがポイントになる。

(略)