このほど、『日本国紀』などベストセラーを連発する作家・百田尚樹氏と橋下徹氏との間で、靖國問題をめぐりツイッター上で大論争が巻き起こった。橋下府政・市政時代には盟友関係にあった2人の激突だけに、多くのツイッターユーザーが固唾を飲んで論争の行方を見守ったが、結局は互いに見解の違いを認め合う形で収束した。この論争から学べることは何か。一方の当事者である橋下氏が振り返る。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(7月9日配信)から抜粋記事をお届けします。

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激しい論争をするための前提条件

靖国神社本殿(写真=iStock.com/coward_lion)

この数日間、僕は、作家の百田尚樹さん、ジャーナリストの有本香さんと、靖國神社を巡って、ツイッター上で激しく論争した。

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最終的に、僕と百田さんの意見は、平行線となった。

それでも、自分たちの考えが、ツイッター上で公になったことには意義があったのではないか、あとは読者の判断に任せましょう、というところに共通の理解を得た。

さらに、百田さんは、今後も僕の意見に対しては全力で非難すると宣言し、僕も持論を広めていくことを宣言した。お互いに、日本を想って。

この議論を通じて確信したことは、「相互に侮辱しない」ということが最も重要だということである。

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加えて、相手の立場の相互理解や、相互リスペクト(敬意)というものがあれば、どれだけ激しく論争しても、無意味な誹謗中傷合戦にならないし、相互の関係性も決定的に破壊されることはない。

百田さんは、僕の大阪府知事、大阪市長時代の改革を高く評価してくれていた。僕は、自分も本を出している人間として、作家としての百田さんの能力には尊敬の念を抱いている。出版不況が叫ばれる現在、2万部、3万部売れれば万々歳の中で、百田さんの作品は、初版で10万部以上が刷られ、50万部以上、100万部以上売れるということが通常になっている。400万部なんていうとんでもなく売れた作品もある。そして作家さん特有の、博識。話していても、次から次へと関連するエピソードの展開が絶えない。

ただかつてから、歴史認識を中心とする日本の国家の在り方のところでは、僕と百田さんとで見解が異なることは相互に認識していた。

百田さんを支持する人は、僕の考え方には猛反対するであろうことをね。

それでも百田さんは、大阪改革の点では賛成するとして、自身のファンから橋下と付き合うな! 維新を応援するな! もっと橋下を批判しろ! という声が沸騰しても、維新を応援してくれていた。

維新の現代表である松井一郎大阪市長は、百田さんの作品の大ファンである。そして百田さんは松井さんの改革姿勢、政治姿勢、人柄が好きなようだ。そういうこともあり、僕が百田さんとは異なる歴史認識を示しても、百田さんと維新の関係が決定的に壊れることはなかった。