マラソンランナーの75%は20万~30万円台の寄付をした

ロンドンマラソンは世界屈指のチャリティーイベントとしても知られている。

「チャリティーランナー」は75%以上(東京マラソンは定員の約15%)で、今年の大会で第1回大会(1981年)からのチャリティー寄付金総額が10億ポンド(約1360億円)に到達した。

チャリティーランナーとは身障者支援や自然保護などの慈善団体への寄付を約束することで、出場枠が割り当てられる仕組み。寄付の最低額は日本円で20万~30万円台で、東京マラソンの10万円より高い。

多くの市民ランナーは多額の寄付をして出場権を得た(写真提供=NIKE)

ロンドンでは女子マラソン(2時間15分25秒)の世界記録保持者であるポーラ・ラドクリフを取材する機会があり、彼女はロンドンマラソンの魅力をこう語っている。

「ロンドンマラソンは英国のアスリートにとって本当に特別な大会です。アイコン的で、大会と一緒に育った人たちもいます。寄付金も世界最大ですし、大きなパワーを作り出していると思います」

ラドクリフは第一線から退いたものの、ランニングを続けており、45歳となった現在も美しいスタイルは変わらない。

「ほとんど毎日走っていますよ。7~8歳からずっと走ってきたので、走らないと自分じゃない感じがするんです。ランニングは私の人生にとって大切なもの。悲しくても、ハッピーでも、とにかく走る。ストレスがなくなり、クリアに考えられるようになるんです。家事から離れて、自分の時間を持つことができますし、時には子供と一緒に走るんですけど、その場合は体験を共有できるのがいいですね」

ポーラ・ラドクリフ選手(写真提供=NIKE)

二児の母であるラドクリフは1日に1時間という時間を作り、10~16kmを楽しみながら走っている。ハイドパーク、リージェンツパークなど、ロンドン市内の公園を走るのが好きだという。そして、ロンドンのランニングが変化していることも感じている。

「10年前と比べて、女性ランナーが急増しています。ロンドンでは男性とほとんど同じ数の女性が走っているんじゃないでしょうか。最近は女性の通勤ランも目立つようになりました」

ロンドンの「マフィア」ボスにも直撃取材を敢行

ロンドンでは現地のランニング事情に詳しい人物にも接触することができた。

2012年に「トラックマフィア」というランニングクラブを立ち上げたコーリー・ワートン。通称、マルコムだ。トラックマフィアとはずいぶん物騒な名前だが、マルコムのビジュアルを見れば、納得できるかもしれない。

「『トラックマフィア』は、私が働いていたオフィスがランニング用のトラックのすぐ近くにあったことがきっかけで始めたクラブ。よその人からは、私たちがトラックに立つ姿がランナーに見えなかったようで、誰かが『マフィアみたいなのがいるぞ!』と叫んだんだ。それで、この名前になったんだよ」