ランニングを愛するロンドンっ子の走り方の「流儀」

毎週木曜日の18時半から約2時間。彼らはマジメにトレーニングをしている。ウォームアップで2マイル(約3.2km)走り、ドリル(予備練習)を25~30分ほどこなし、それからインターバルなどのトラックメニューという本格的なものだ。

「トラックマフィア」代表のマルコム(写真提供=NIKE)

マフィアなのに“みかじめ料”は発生しない。「誰でもウエルカム。予約制ではないし、メールも必要ない。そのときに来てくれればいい。基本は無料だ」とマルコム。多いときには60人ほどが集まり、トラックで汗を流している。男女比は6対4くらいだ。

マルコムは「NIKEランニングクラブ」のヘッドコーチも務めており、トラック練習をやらないランナーとも交流がある。彼も、ロンドンのランナーは増えていると話す。

「以前はランナーといえば、どことなく近づきにくい存在だった。たとえば、モー・ファラーのようなスリムな体形でないと走ってはいけない、という感じがあったんだ。でも、幅広い層にランニングが浸透してきた。影響力のある人が走り始めたことが促進力になっているし、ランニングクラブのようにコミュニティーに属しながら走る人も増えた。また生活スタイルとランニングがクロスオーバーするようになったことも大きい。アパレルやシューズもカッコよくなり、ランニングが生活スタイルの一部になってきたからね」

「公園のなかを走るのはold peopleが中心だ」

そう語るマルコムと一緒にロンドンの街を駆け抜けると、驚かされた。まずマルコムが俊敏だったこと。それにマルコムが選んだルートがちょっと考えられないものだったからだ。

日本で街中を走る場合、大通りを選ぶ人が多いが、マルコムは真逆。路地裏を好んで走る。この道は通り抜けられるのか? という不安を抱くような道でもガンガン進んでいく。ロンドンの街をジグザクに走るのだ。

「私は街中を走るのが好きで、いつも“障害”を探しているんだ。坂道、階段、交差点。細い道があれば、行ったり、来たりしてインターバルなんかもする。目に入るものを遊び場的に自分のランニングに生かすんだよ。公園は芝生と木々しかないからね」

マルコムもマラソン練習をするときには、セントジェームズパーク、グリーンパーク、リージェンツパーク、ハイドパークを走るというが、公園のなかを走るのは、「old people」が中心だという。

「ロンドンは公園と公園をつなぎながら走るだけでも、いいコースを取ることができる。マラソン練習のために距離を踏むにはちょうどいい。でも若者はあまり公園を走らないな。ハマれば楽しいけど、ランニングは正直、退屈だ。そこまで興味のない人を引き込むにはいろいろとやらないといけない。走るとワクワクするような場所を探すんだ」

そこでマルコムらが仕掛けているのが、ランニングコースらしくない場所でのイベントだ。

「たとえば、地下の駐車場、ゴーカートのサーキット、サッカースタジアム。最近はショッピングモールのフロアを使ったね。場所によってはNOと言われることもあると思うけど、ほとんどNOと言われることはないな。ガハハハッ」

ロンドンマラソンはロンドンっ子のお祭りだ(写真提供=NIKE)