お台場も商業施設ばかり認可しているが、江東区があの地区に学校をつくりたくないからだという。マンション用地として最高の場所だが認可されない。臨海副都心を第二の大手町、と考えた古い構想から一歩も抜け出していないからだ。

たとえば定住人口を20万人と決めれば、それに対して学校や病院などの適切な数や配置も決まってくる。マンション建設も都市計画の一部としてやるべきなのだ。

ブロックごとに都や区が買い上げて、地盤を強化し、共同施設をつくる。その上に容積率の高い近代的な高層住宅と商業施設を民間資金でつくる。そこに住んでいた人たちは2年間公営住宅に移ってもらって、住宅が完成したら管理費だけで住めるようにする。ブロック単位で開発すれば、小学校をつくる余裕もできるはずだ。

要は、ビジョンとコンセプト。それさえあれば都市計画はできる。5月雨式に乱開発するから、日本には住環境に付加価値となるような街並みやコミュニティが生まれてこないのだ。

江東区、中央区、港区、台東区、品川区、墨田区など、大手町まで20分以内の通勤圏が整備されるのは、21世紀の世界都市を目指すうえで非常に重要だ。それから築地、晴海、豊洲、勝鬨辺りは開発次第でマンハッタン以上の夜景スポットになるのだから、中央区と港区、江東区が一緒になって東京のシンボルになるようなプロジェクトをやらなければいけない。

もし実現すると、オリンピック誘致どころの騒ぎではない。東京の再開発が始まれば、向こう20年は盆と正月が一緒に来たくらい忙しくなるだろう。内需主導の経済成長のエンジンになること請け合いだから、同じ経済対策でも大いに意味がある。

東は墨田区や江戸川区、西は工場地帯が廃れた京浜運河から横浜まで外側に開発が広がっていけば、20年では終わらないかもしれない。そして30~40年後、街並みが整備され、誰もが住みたくなるような住環境が出来上がったときには、東京は再び世界の注目を浴び、何らかのワールドセンターになっているはずだ。

それは恐らくITの分野ではなく、秋葉原をヘソとしたマンガやアニメ、ゲームといったクリエーティブな領域かもしれない。あるいは西麻布をヘソとした食文化かもしれない。世界一のコンサートホール数をフル活用した芸術と文化の街かもしれない。

それに対抗して名古屋や大阪、福岡などが都市の再活性化を競う。カネも需要も十分にあるから、こうした計画は絵に描いた餅ではない。ビジョン型政治家が出てくれば、十分実現可能だ。

これが私の考える日本の突破口、日本版ニューディール構想なのだ。

(小川 剛=構成  AP Images=写真)