初期段階の土下座は効果的
野澤弁護士によると、喧嘩などその場ですぐに被害者とコミュニケーションが取れ、かつ責任を否認すれば相手も長期化することがわかっている案件では、即時の土下座が有利な事情に評価されることがある。
「『無罪推定の原則』を悪用し無駄な言い逃れをする人がいるのは相手もわかっていることが多いので、『早めに、潔く』が評価される可能性があります。特に痴漢や強制わいせつのような性犯罪では、奥さんや年ごろの娘さんがいれば否認することで保身を図る方もいますが、そうした状況でも保身しなかったことが微調整の段階で考慮されるのです」
土下座をする人の社会的ポジションが重要であるのは言うまでもない。
「『職業に貴賎なし』と言いますが、やはり権威ある立場の方が土下座をすると、その深刻さを感じてくれやすいでしょう。逆に、営業力が最重要の要素だとイメージされている職業の場合、損をしやすい。『身なりや言葉遣いも重要な要素ですよ』とはよく言うが、このフレーズは土下座シーンでも当てはまります」
経営学で有名なピーター・ドラッカーは、「誠実さ(integrity、インテグリティー)」を何よりも重要視していた。「誠実」とは何かを自問自答したうえで反省の意思をすぐに態度として示せる意味での土下座は有効なのかもしれない。
(写真=PIXTA、iStock.com)