冷房のきいた部屋にいるなら経口補水液は不要

昨今の猛暑の影響で、夏場は「熱中症予防に塩分を摂りましょう」とよく言われます。もちろん大量に汗をかいたときや脱水時には、水分と合わせて塩分を補給することも大切です。ただ、冷房のきいた部屋でふだんと同じように生活をしているなら、経口補水液を摂る必要はありません。

市販の経口補水液に含まれる塩分は、1本(500ml)で1.5グラム。これまでの話を踏まえると、それなりの量だということがおわかりになると思います。いつものとおりの食事を摂り、なおかつ経口補水液をちょこちょこと飲んでいたら、あっという間に塩分を摂りすぎてしまうことに注意してください。

減塩指導をしていると、「何歳から減塩を心がけたほうがいいですか」といった質問をされることがあります。

身も蓋もないかもしれませんが、その答えは「なるべく早く」です。いったん濃い味に慣れてしまうと、何か病気などのきっかけがないかぎり、なかなか薄味の食生活に切り替えるタイミングをつかめず、濃い味から抜け出せなくなってしまうからです。

減塩に「早すぎる」はない

人の舌が感じる味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本とされています。そのうち塩味は、料理の味を決める大事な要素です。焼いたお肉に塩をひとふりするだけでも、ぐんとおいしくなりますよね。料理の味を左右するだけに、幼いころから塩味のおいしさを覚えてしまうと、どんどん濃い味を求めるようになってしまいます。

その代表格がスナック菓子。スナック菓子には、塩分だけでなく糖分や脂肪分など、人間がおいしいと感じるものが多く含まれ、中毒性があることがわかっています。小さいころにスナック菓子にハマってしまうと、それを取りあげるというのはなかなか難しいもの。そうこうしているうちに、どんどん濃い味の食生活が習慣化されてしまうのです。

濃い味に慣れてしまってから、病気を機に減塩せざるを得ないとなるとひと苦労です。たとえば1日に20グラム近い塩分を摂っていた人が、いきなり6.0グラムに塩分を減らさなければいけないわけですから、何を食べても味がしなくてまずいと感じるはずです。実際、「病院食は薄味でまずい」とよく言われます。

減塩するのに早すぎるということはありません。中年になってからとか、高齢になってからとかは関係ないのです。気づいたときから減塩生活を心がけ、薄味に舌を慣れさせておく。それが大きな病を抱えて慌てる前に、日々の生活のなかでできる防衛策なのです。