両立支援は女性の「活躍」に結びついているか

次に、育児支援です。育児の場合は介護と異なり、いつ子供が生まれるかは予測できますし、出産休業や育児休業、時短勤務といった制度も整備され、すでにそうした制度の利用者が社内にいるため、その使い方についてもある程度情報があります。

問題は、そのことが本当に女性の「活躍」にちゃんと結びついているのかということです。女性が結婚・出産後も離職せずに仕事を続けられるという目的は、ある程度達成されているかもしれません。しかし、育児休業を長く取ったり、復帰後も長く時短勤務を続けたりすれば、能力向上につながる仕事の経験量はどうしても減ります。

さらに、残業や出張といった現場の要求に対応できないことで、上司に使いにくい社員と思われたり、サポート的な業務ばかり担当せざるをえなくなったりといったこともありえます。それが女性のキャリア形成を阻害したり、働く意欲をそいだりしている可能性にも注意を払うべきではないでしょうか。

仕事と育児の「両立支援」がある程度達成された今、新しい課題は女性の「活躍支援」です。女性が希望すれば、できるだけ早くフルタイム勤務に戻り、育児や家庭生活とも両立させながら時には残業もし、キャリアアップをはかっていける――。そういう働き方を可能にすることを、目下の「働き方改革」の中で企業はめざすべきでしょう。「働き方改革」のひとつの目的は、残業付きのフルタイム勤務ができないと活躍できない働き方を解消することです。

保育園のお迎えに夫が行くべき理由

ここで重要になるのが、共働き女性社員の夫です。保育園への朝の送りを担当する父親は増えていますが、夕方のお迎えはほとんど母親が担当しているのが現状です。週に2回でも夫が定時退社してお迎えを分担できれば、女性社員が必要なときに残業できる余地が広がります。こうした夫婦での日常的な育児の連携は、夫がスポットで育休を取ることよりも大切なことです。

最近、花王やリコー、大成建設など一部の企業では、育休復帰時などに女性社員と上司、人事に加え、女性社員の夫の4者で、復帰後の仕事と育児の両立に関して面談を行う動きが始まっています。とはいえ、そうした企業はまだ少数で、当面は女性社員自身が「夫を巻き込まなくてはダメだ」という覚悟を決める必要があります。

そして企業も、女性社員にキャリア研修の中で、自分自身の仕事やキャリアを大事にするのなら、「あなた1人で子育てをすべて抱え込んではいけません」というメッセージを伝えていくべきです。男性社員に対しても、育休を取る効果的なタイミングや、カップルで育児や家事を担うことの重要性といった情報を提供し、継続的な育児関与に誘導するのが望ましいといえます。