売掛金が不良債権に……噂は本当なのか

『週刊新潮』では、ゾゾについて「2カ月の間、回収できていない売掛金があり、不良債権化している」と報道していたが、この点についても、財務諸表から検証してみたい。

確かに、四半期ごとに数字を追ってみると、現預金残高が12月末時点で82億円にまで減少し、その代わり売掛金が膨らんでいる。

また、ゾゾの売上債権回転期間(=売掛金÷1日当たり売上高)を計算すると、84日もある。つまり、商品が売れてからその代金を回収するまでの期間(回収サイト)がおよそ3カ月もかかっていることを意味する。

仮にゾゾが、建設業や重厚長大な製造業であれば、売上債権回転期間が100日以上あってもおかしくはない。ビジネスの特性上、回収の足が長くなるのは当然だからだ。しかし、ゾゾのような小売業の場合、30日前後が平均的な売上債権回転期間だ。ちなみに、アマゾンは26日、三越伊勢丹ホールディングスでも42日である(図表3)。

このことから、ゾゾの売掛金の中には回収見込みのない不良債権が含まれているのではないか、と思われている節がある。

特殊なビジネスモデルの正しい読み解き方

確かに、一般的な分析結果では、「不良債権を抱えている兆候あり」という解釈となる。しかし、ゾゾは一般的な小売業とは異なる特殊性もあるので、その点を考慮して分析する必要がある。

その特殊性とは、ゾゾでは商品の販売価格のうち手数料部分のみ(純額)が売上として計上される一方、売掛金は総額で計上されていることだ。

ゾゾは、いわば手数料ビジネスであるため、手数料部分を売上高とすることは理にかなっている。他方で、お金の流れとしては、顧客から総額で代金を受け取り、手数料を除いた分をブランドに支払っているため、売掛金を総額で計上することについても合理性がある。

このように売上高(分母)が純額で、売掛金(分子)が総額で、基準としている数値が整合しないため、単純に算出される売上債権回転期間は、ゾゾの実態を正しく反映していない。

ではどうすればいいのかというと、売上高に代えて商品取扱高にすれば、分母と分子どちらも総額で両者の整合性が取れるため、実態を反映した回転期間が計算できる。ゾゾの売掛金は274億円、1日当たり商品取扱高は約8.8億円なので、274÷8.8で、売上債権回転期間は31日程度に収まった。同じように過去の数値を算出してみても、徐々に短縮されてきていることがわかる(図表4)。

このようにゾゾのビジネスモデルを正しく理解し、実態に即した分析を行えば、売掛金が滞留し不良債権化している兆候はどこにも見当たらないことが分かる。